不況に負けない「原因」と「結果」の創り方 ~ディズニーリゾートにサービスの本質を学ぶ~

投稿者:小川 悟

2008/12/23 14:47

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心の中の思いが 私たちを創っている

私たちは 自分の思いによって創り上げられている

/『「原因」と「結果」の法則』(ジェームズ・アレン著)

 

■不況に負けないオリエンタルランド 東京ディズニーリゾート強さの秘密(MONEYzine,2008年12月23日)

http://moneyzine.jp/article/detail/117163

 

上記の記事を読んでいろいろ思い出すことがありましたので、今回のコラムでは私の個人的な思い出話と、副題にも設けましたが、東京ディズニーリゾートについて書かれた書籍の中で私がかつて読んだものについて幾つか触れていきたいと思います。

 

さて、今日は12月23日、明日はクリスマス・イヴですね。通勤途中に歩く渋谷・道玄坂も、1ヶ月ほど前から両脇の街路樹がクリスマス・イルミネーションに彩られ、夜からは雰囲気のある景観を演出しています。私が帰宅する頃には既に消灯されていることが多いため、このイルミネーションを満喫できるのは主に仕事休みの日に限るのですが……。

 

――と冗談はさておき、去年の今くらいの時期に、私は本コラムにおいて、企業理念に基づいて「年頭所感」を述べる ~「ホスピタリティ」他、CS部で大切にしている考え方~と題して、リッツ・カールトンのホスピタリティについて書いたことがありました。今年も2008年の締めくくりとしてCS部の目指すべき姿について書くことで、来年度の目標を一段高いものにしていきたいと思います。

 

今年1月のコラム、内部統制元年 ~企業の社会的責任と評判管理について~でも書いた「今年の漢字」。2008年を表す漢字が「変」に決まったそうです。言葉遊びではありませんが、私自身が漢字自体に興味があることもあって「変」という漢字は好きで、以前は「変化」を楽しむことを推奨した新卒入社から丸3ヶ月 ~”変化”を楽しもう~というコラムを書いてしまった程です。しかし、現実の世の中は厳しく、前回のコラムでも書いたようにかつてない不況に大企業でさえも、先が読めないくらいの時代に突入し、「金融危機」、「株価低迷」、「大型倒産」、「派遣切り」といった消費者の不安を一層煽り立てるような見出しが、各種メディアに大きく踊るようになってきました。実際、厳しい状況に追い込まれてしまう人も多いと思うのですが、生活者の心理として、こうしたマスメディアの発する言葉の影響力はかなり強く響くものと想像します。まるで不況下の煽りをそれほど受けていない人まで、物事がうまくいかない原因がすべて不況にあると勘違いしてしまいそうなくらい、また自身に課せられた最大のミッションがこの不況を脱するための方針を唱えなくてはならないことだと拡大解釈してしまいそうになるくらい、今の世の中は暗いニュースが氾濫しています。これだけの情報社会にあって、ある種閉塞的にも見えるワンウェイな情報の嵐の中で、自分にとって本当に必要な情報を見極めることは大変重要なことではないかと私は考えています。また、私はこの「情報」というものについて、たとえ閉塞的な環境にあっても「その情報だけがすべてではない」と考えるようにしています。そして、常に「閉塞的なのは社会なのではなく、自分の方こそが閉塞的なのだ」と考え、まだ自分が見知らぬ情報については、日常に溢れかえっている情報の海の中から自分にとって本当に必要な情報を得るために自分の立つ位置や行動範囲を変えようと努力しています。つまり、「情報」というものは自分がどう考えるかで自由に入手できるものだと考えています。詳細については後に触れることもあるかもしれませんが、加藤昌治氏の言葉を借りれば「カラーバス」(cf.『考具 考えるための道具、持っていますか?』)効果に近しい考え方になると思います。

 

冒頭に挙げた記事についての話題に戻りますが、昨今書店の新刊コーナーを物色すると、『感動をつくる―ディズニーで最高のリーダーが育つ10の法則』(リー・コッカレル著)の隣に、『絆が生まれる瞬間 ホスピタリティの舞台づくり』(高野登氏著)が平積みされている光景をよく見かけます。前者がウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートの業務を通したリーダー像について、後者が『リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間』の続編的な内容で、俗に「感動企業」と呼ばれることもある両社の独特な企業文化について余すところなく書かれています。

 

リッツ・カールトンの有名な、「リッツ・カールトン・ミスティーク(Ritz-Carlton Mystique)」に当たるものをディズニーリゾートの中で探すなら「魔法」になると思います。以前にオリエンタルランドで勤務したことがあると言っていた知人に仕事内容について聞いたことがありましたが、固く機密保持契約を交わしているとのことで知ることができませんでした。そういったディズニーの徹底ぶりが「魔法」の神秘性を増幅させ、さらに魅力的に映ったものでした。

 

従業員は「キャスト(出演者)」と呼ぶ。

入場者は「ゲスト」と呼ぶ。

群集は「観衆」と呼ぶ。

勤務は「パフォーマンス」と呼ぶ。

仕事は「役」と呼ぶ。

職務説明書は「脚本」と呼ぶ。

制服は「コスチューム」と呼ぶ。

人事部は「配役」と呼ぶ。

勤務時間は「オンステージ」と呼ぶ。

勤務時間外は「オフステージ」と呼ぶ。

/『ビジョナリーカンパニー』(ジェームズ・C・コリンズ,ジェリー・I・ポラス共著)より。

 

――私は東京ディズニーリゾートのクリスマスを体験したことはまだありませんが、いつも以上にイルミネーションなどが凝っているなど、幻想的な光景になっているのでしょうね。私は今年の夏に、開園25周年を迎えた東京ディズニーランドに行ってきました。学生時代には卒業旅行としてアメリカに行き、オーランドにある「Walt Disney World(MGM STUDIOS)」を訪れたことがありましたが、東京ディズニーランドに行ったのは確か学生時代が最後だったと思いますので懐かしく園内を見て回ったものでした。およそ10年来の東京ディズニーランドでしたが、徹底的に教育が行き届いた「キャスト」の対応は10年前と変わらず素晴らしいものでした。何十年の間も従業員教育を継続的に徹底し、企業文化を守り続けることができているのは本当にすごいなと改めて感心したものでした。

 

このオリエンタルランド社の強さは、どこから来るものなのでしょうか。1974年当時、京成電鉄と三井不動産を親会社とするオリエンタルランド社が三社連名でウォルト・ディズニー・プロダクション社との提携について共同声明を発表しましたが、その提携の条件は非常に厳しい内容で、「新テーマパークの入場料の一〇パーセント、飲食・物販代金の五パーセント」(cf.『ディズニーランド物語―LA‐フロリダ‐東京‐パリ』)が、東京ディズニーランド運営に関するライセンスを得るための引き換え条件だったそうです。これらは売上に対するパーセンテージであって純益に対するそれではなく、さらに建設費も全額オリエンタルランド社が負担という内容だったそうです。テーマパークの平均利益率が20%と言われている中で、この条件は当時も相当厳しい条件だったのではないでしょうか。オリエンタルランド社のWebサイトの沿革のページには、米国法人ウォルト・ディズニー・プロダクションズ(現ディズニー・エンタプライゼズ・インク)との提携についてあっさりと書かれてありますが、先の書籍によれば、当時のオリエンタルランド社専務であった高橋政知氏(cf.Wikipedia「高橋政知」)が、一時期提携解消話も出してきたディズニー側と粘り強い交渉を続けた秘話が詳しく書かれてあり、開園前後も大変な苦労をされて今があることを知ることができます。

 

cf.「東京ディズニーランド25周年を支えた原動力」(nikkeiBP on Yahoo!ニュース,2008年4月10日)

http://event.media.yahoo.co.jp/nikkeibp/20080410-00000000-nkbp-bus_all.html

 

以上のように、こうした今輝く大企業であっても、創業期や黎明期から崇高な思いを胸に抱きながら、まだ誰も見ぬ未来を信じてひたすら努力を重ねてきた結果が今を築いていっていることを、様々な書籍を通して私たちは知ることができます。

 

ところで、この企業を「自分」にあてはめて考えてみるとどうでしょうか?私たちはまだ見ぬ自分の未来に対して明確な「ビジョン」を抱けているでしょうか?企業も人の集合ですから、本質は同じだと思います。「どうしたい、どうなりたい」がないのに、運命が勝手に良い方向へ導いていってくれるなんてことはない筈です。

私たちが提供するWebコンサルティングもこれと似ています。私たちのお客様に限らないことですが、当社と契約することを決断されたときに、初めて新しい未来という選択肢(方向性)が示されます。正直に言って、この時点で絶対にうまくいくなどということは誰も約束できない筈です。ですので、運命的に巡りあった両社はこの先どうすればよいのかと言えば、「絶対にうまくいく方法を必死で考える」のです。詭弁のように思われるかもしれませんが、私はお客様との打ち合わせの際はいつも真剣にお客様のビジネスについて理解しようとしています。

「どうすればうまくいくのか?」――、自社で仕事を進める中でずっと悩み続け、また都度問題解決してきた経験などを踏まえ、今度はお客様の会社の社員になったつもりで「どうすればうまくいくのか?」と同じように考えてゆくのです。もちろんお客様は多岐の業種に渡るので、当然私では分からないことも多く話に出てきます。そのときは、自社で業務を進める際に失敗したくない一心で上司に質問するときと同じように、お客様に一生懸命質問させて頂きます。ご提供するWebサイトを中長期的視野で資産化させてゆくために、最終的に「どうしたい、どうなりたい」のか両社の抱くイメージをすり合わせしていき、予算の許す限りそのための手段を、Webディレクション時に設計に盛り込んでいきます。

 

「うまくいく」という結果をもたらすためには必ずその「原因」にあたるものがある筈で、私は自身のアイデアのどんな部分をその原因と考えているのか――、常に根拠を求めて自問する癖があります。CS部員の仕事内容も日々の作業内容は多岐に渡りますが、各々が自律して考えて行動する際に注意していることとしては、その言動や考え方、方針が「お客様のため」、「会社のため」にという私たちのステークホルダーに価値をもたらす「価値活動」となっているかということです。それらのベクトルが誰にとっても不幸になる方向を向いている場合、結果がどうなるかは目に見えています。未来予測というと科学的な難しい話になりそうですが、「このままのやり方、考え方でいくと先々どうなるだろうか?」という予測なら、本来誰にでもできる筈です。また、当たり前のことですが、物事は「このままでは不幸になる」と考えるよりも、「どうすれば幸せになるか?」と考える方がうまくいくと言われています。しかし、世の中全体が暗いニュースで覆われるというくらい大きな話になると、人によっては暗い雰囲気にのまれてしまって、自分の考え方まで暗くなってしまうこともあるかもしれません。

 

そういった意味で、冒頭のエピグラムでも引用したジェームズ・アレンの残した珠玉の言葉――、ナポレオン・ヒルで言えば「思考は現実化する」、アール・ナイチンゲールで言えば「人間は自分が考えているような人間になる!! 」となるでしょうか――は、元気付けられます。

 

2006年にお亡くなりになられた経済学者、ジョン・K・ガルブレイス氏の『大暴落1929』は、「原因と結果」というタイトルで最終章を締めくくっています。最近刊行された版の帯には、「バブル崩壊、株価暴落のあとに必ず読まれる、恐慌論の名著」と評が書かれていますが、多くの人が「結果」に対する「原因」という本質を探ろうとしているのかと思います。ガルブレイス氏については、政治経済学部出身の友人の話には当たり前のようにその名が出てきましたが、文学部出身の私としては(学部に関係なく私だけの話かもしれませんが)、恥ずかしい話、当時全く知らない人物でした。大学卒業後に『現代経済学の巨人たち―20世紀の人・時代・思想』(日本経済新聞社編)を手に取ったのも、そうしたコンプレックスの反動だったと思い返します。ガルブレイス氏死去のニュースがあった際には、追悼の意を込めて、趣味で運営するネット上の書評に本書についてのレビューを書いたものでした。

 

繰り返しになりますが私に課せられたミッションは、この不況を脱するための方針を唱えることなどではなく、ご契約頂いたお客様のWebサイトを成功させるために知恵を絞ること、そして、サービスを提供するCS部員全員が等しくその実現のための知識や考え方、実行力を有するようにすることです。この考え方は、世の中が不景気であっても好景気であっても変わりません。ただ、そのときとのとき与えられたミッションに対して全力を尽くすことだけが、自分の仕事だと考えています。

 

最後になりますが、本コラムが、私としては今年最後のコラムとなります。今年も残すところあと僅かとなりました。不況に負けない結果をもたらす原因づくりを最後まで徹底していきたいと思います。それでは、少々早いかもしれませんが、良いお年をお迎え下さい!