新卒入社から丸3ヶ月 ~”変化”を楽しもう~

投稿者:小川 悟

2008/06/30 00:58

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進化論を唱えたダーウィンは、「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」という考えを示したと言われています。

/「第百五十三回国会における小泉内閣総理大臣所信表明演説」(「首相官邸」より抜粋)

つい先日の22日まで、上野にある国立科学博物館(以下、科博)にて「ダーウィン展」が開催されていましたが、ご覧になられた方はいらっしゃいますか?私は同僚を誘って今月に行って参りました。ニューヨークで開催されたものが日本に来た展覧会で、7月からは大阪でも行われるようです。私がこの科博に足を運ぶのは、2004年11月2日の新館グランドオープン以来のことでした。

『ビーグル号航海記』、『種の起源』等の著作や、進化論で有名なチャールズ・ダーウィンですが、このようにまとまった展示が博物館でされるのも珍しいのではないでしょうか。展示内容の方も、博物館であることを活かした構成となっており、見て楽しめる要素もふんだんにあり、子供連れの入館者も多かったです。

まずは、チャールズ・ダーウィンの人となりについて――、イギリスを代表する陶器メーカーであるウェッジウッド社を創設したジョサイア・ウェッジウッドの孫(母方)にあたり、また、父方の祖父は医師であるエラズマス・ダーウィンであり、両家の血統を引いた裕福な家庭に生まれました。そういった背景もあって、20代前半にして普通の人ではとても体験できないような大きなイベントに際することになります。それが1831年から5年間に渡って世界を周航したビーグル号による世界航海で、進化論の着想を得たと言われています。

 

さて、ここまではおそらく一般常識の範囲で、これ以上深堀りしようとしても私は自然科学の専門家ではないですし、進化論について詳しいところは分かりません。ただ、この”進化論”が組織を語る上で都合が良い内容なのか、今までにも多くが引用され、意味が派生していっているようにも見えて興味を持ちましたので今回のコラムでも採り上げてみたいと思います。

ダーウィンは自身の論に対して、別の解釈で適用されることは勧めていなかったようですが、今日では「自然選択説(自然淘汰説)」や適者生存の考え方が子孫を残す力を経由して、”生き残るために環境変化に強くなろう”といった意味にまで論理を飛躍して考えられるようになり、ビジネスシーンにおいても度々引用されてきました。特に冒頭に掲げた小泉元首相の所信表明があった後は、国のリーダーが発した言葉であることもあり、多くの方に影響を与えたのではないでしょうか。

『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』(2005年)というドキュメンタリー映画では、2001年に破綻したアメリカの大企業エンロンのスキャンダルについてが描かれています。その中で、当時のCEOスキリング氏が、リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』を愛読していたエピソードが語られます。ダーウィンの進化論以降に世に登場するDNAの概念ですが、この”DNA”についてもビジネスシーンではよく採り上げられることが多いです(cf.『リクルートのDNA――起業家精神とは何か』等)。

繰り返して言いますが、私はこれらの学説や学術的な部分における是非について問うわけでなく、なぜ多くのビジネスマンやリーダーが同じように感銘を受け、語り継がれる魅力を持っているのかについて興味がわきました。思うに「組織」と言っても、進化論のように生物の体系そのものもそうですし、皮膚組織や細胞といったような人体を形成する組織もイメージでき、仕事上で組織を抱えるリーダーにとって共通のイメージを抱きやすく、また他者へ対する説明時においても例えやすいテーマ性を帯びていることも理由にあるのかもしれません。

では、この「変化に対応できる生き物」について。強引に例えて言えば、当社に今残って頑張っている人は、今までに職場を離れていった人たちと比べてみて、「最も力の強いもの」であるわけでも「最も頭のいいもの」であるわけでもありません。当社が今のような組織になるまでにたどった道のりの中で、求められる人材のタイプも微妙に変わってきているのかとは思いますが、いずれにしても会社の成長等の環境変化に合わせて柔軟に自身も変化、成長させてきた人が残っているのかと思います。

 

ここで視点を変えて、新卒入社者について。当社が新卒を受け入れたのは、今年で3期目になります。退職者を含めなければ累計60人くらいが入社しているわけで、当社の全体の3割を占めます。当然私の見るCS部にも新卒入社者が多く配属されています。私自身、新卒で社員として入社した経験がないため、当初は新卒の受け入れに対して不安も多かったのですが、親の期待を背負って学業を修了して自立し、苦労して就職活動を勝ち抜いて、ようやく初めて入社した会社がその人にとって最良の選択だったと思われるために努力できることはしていきたいと思ったものでした。人事部門の方で入社前の意思確認でマッチングした人材が入社したのであれば、いくら社会が厳しいとは言っても本来は弱音を吐いて、自身の選んだ道を簡単に捨て去ることはないと思うのですが、「五月病」という言葉もあるくらいで、ときに初めて体験するようなプレッシャーなどにぶつかると解決のしようがないこともあるのではないかと考えたこともありました。学生から社会への進出というのは一つの大きな環境変化だと思います。今まではどちらかというと「お金を払って物を買ったり、サービスを受けていた側」ですが、社会に出た途端、「お金を頂いて物を売ったり、サービスを提供する側」というようにまったく逆の立場になるわけですので、そのギャップが小さいわけがありません。まだ社会を知らず、恐いもの知らずだった学生時代までは、他人のアラを見つけては文句を言うことに長けていたとしても、社会に進出した瞬間、サービスを提供する者としては一年生になるわけで、いかに自分が求めていたことが、実現することの難しいことだったかに気付かされるわけですから、人生の大きな転機とも言えるでしょう。ともすると、そうした大きな環境変化に対応できず、今までは見られなかった心身の変調をきたす場合もあるでしょう。それを俗に「適応障害」などと呼ぶときもあります。

 

私なりに、そうした環境変化を楽しむコツとして自ら意識していることが、「アイカンパニー」「自分株式会社」の考え方です。株式会社リンクアンドモチベーションの小笹芳央社長がセミナーや、著書(cf.『モチベーション・リーダーシップ 組織を率いるための30の原則』等)の中でも繰り返しお話されている考え方です。他にも「自分戦略」といった言葉もありますね。

cf.参考サイト
・モチベーションエンジニアリング(Wisdom)
http://www.blwisdom.com/motivation/
・自分戦略研究所(@IT)
http://jibun.atmarkit.co.jp/

こうした発想や考え方を伸ばすために、自社でも関連した社内向けセミナーを企画したことがありましたが、そのお話についてはまた別の機会でしようと思います。

社会や組織に依存して、自ら何も決定しない、リスクをとろうとしない、いつも何か問題があると環境や他人のせいにする、そんな人材は絶対にリーダーシップを発揮できない。自己責任意識のないリーダーにメンバーは決してついてこないからだ。

/『モチベーション・リーダーシップ 組織を率いるための30の原則』(小笹芳央著)

耳の痛い文章です。私も前職時代はよく会社や環境のせいにしてばかりいたものでした。幸い私の場合、当社へ入社したときは「唯一のCS部員」としての待遇で入社したため、責任をなすりつける対象がなく、すべて自己責任であることを日々痛感できていたので環境に恵まれたかもしれません(汗)。裏を返せば、現在200名体制となった当社ですが、今から入社してくる人の場合は、入社当初から頼れる対象があるため、自分の中に少しの弱みや甘さがあれば、すぐに依存できてしまう体制にあると言えます。そういった環境の中で、いかに自分力を発揮して他者依存型にならないよう自律の精神を持って仕事に取り組めるかが、一つの大事な要素となってくるのではないかと考えています。

 

今年3月に、財団法人社会経済生産性本部が、恒例となった「(今年の)新入社員のタイプ」を発表しました。

cf.平成20年度・新入社員のタイプは「カーリング型」(財団法人社会経済生産性本部)
http://activity.jpc-sed.or.jp/detail/lrw/activity000857.html

06新卒より「ブログ型」」「デイトレーダー型」、そして「カーリング型」ときています。個人的には、昨今流行している血液型関連の書籍のように、演繹的に「○○型の人はこういうタイプが多い」と列挙されてもあまり興味がわかないのですが、社員の行動パターンや仕事の成果を統計的に見て、帰納的にグルーピングした上で群ごとに傾向と対策を講じる考え方は面白いと思います。この新入社員のタイプに対する命名に関しても、同じ類の仕組みで集計した統計結果を元に作られているようです。上記サイト内で紹介されている詳細のPDF資料には、「氷河期入社組の先輩との意識のギャップが懸念される」とありました。私も一応、氷河期時代に就職活動をしていた世代ですので、多様性を受け入れつつ、そうした世代とのコミュニケーションもしっかりとっていきたいと思いました。そう言いながら、一言だけ言わせて頂ければ「変化は楽しい」です。変化を恐れるのではなくて、楽しめるくらいの方が人生得だと思います。今期もドラスティックに変化できる年にしたいです。結びに代えて。

cf.「就職活動回想録 ~新聞各社インターネット進出の潮流の中で~