問題解決の手法を歴史に学ぶための「社内推奨図書」制度 ~映画「レッドクリフ」観ました!~

投稿者:小川 悟

2008/11/10 00:53

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義という文字は、解字からいえば羊と我を複合させて作られたとされる。羊はヒツジから転じて美しいという意味をもつ。羊・我は、「我を美しくする」ということであろう。
/『項羽と劉邦(下)』(司馬遼太郎著)

この休みの間に現在公開中の映画、レッドクリフ(Part 1)を観てきました。諸葛孔明と周瑜という二人の名軍師、言わば“組織のナンバー2”にスポットを当てた構成で、それぞれを演じた金城武さんとトニー・レオンのお二人に知的な雰囲気が表れていて、魅力的な人物像が描かれていたと思います。テーマ曲を歌うアランさんの曲も良かったです。

 

事前に「週刊ダイヤモンド(08年10月25日号)」(特集:「「歴史」を知れば経済がわかる!」)に掲載されていた、ジョン・ウー監督がこの映画について語っていた一節――、

「たとえば人間は、誰かと知り合うことで仲間になり、互いの長所や短所を評価し合います。そして、心を開いて交流することで、互いを思いやり、感謝したりする気持ちが生まれます。そのような絆や友情は、人生で直面するあらゆる困難に立ち向かっていく際のベースになります。」

「信念と勇気を持って、大きな”困難”に立ち向かっているビジネスマンに観てほしいです。」

――を読んで関心を持ち、観に行ってみたくなりました。

 

「レッドクリフ」は、三国志の中でも特に有名な「赤壁の戦い」をベースとした内容です。今年2008年は、この「赤壁の戦い(208年)」からちょうど1800年にあたるということで、特設サイトも上がっていたりします。少ない人数でも、知恵と勇気と結束力とで多勢に向かってゆく姿勢を描いているところは、以前に観て思わず当社組織をかぶらせてのめり込んでしまった300(スリーハンドレッド)とも似通う部分があり、自分好みな内容の映画でした。

cf.「赤壁の戦いから1800年 三国志特集 <週刊特集 Vol.80>」(Yahoo! JAPAN)
http://weekly.yahoo.co.jp/80/

 

この三国志――、以前にこのコラムで「諸子百家」について触れたことがありましたが(cf.市場撤退という東芝の決断 ~現代に生きる古代中国の思想、「諸子百家」と呼ばれたコンサルタントたち~)、彼らが活躍した春秋戦国時代から秦の始皇帝、項羽と劉邦の時代を経て、「三国志」で語られる三国時代へと至る中国の壮大な歴史の中で、私も以前に興味を持ったことがありました。

小学生・中学生の頃私は無類のゲーム好きでしたので、KOEIの「三國志」シリーズやナムコの「三国志 中原の覇者」などで触れてから興味を抱いて、吉川栄治の小説などへと派生していったものでした。「三国志 中原の覇者」は1988年に発売されましたが、もうあれから20年が経つのですね。ゲーム開始時に自身が操作する太守のキャラクターを選択する場面があるのですが、幾つか簡単なアンケートに答えてゆくと解答した選択肢の内容に沿った太守が選ばれるような仕掛けとなっていて、各太守の性格や領土の状況などを刷り込みされて思わず感情移入してしまっていたような記憶があります。

 

それから実はもう一つ、この映画を観るにあたって考えていたことがあります。それは、「三国志演義」で語られている有名な逸話、「桃園の誓い」Wikipedia「桃園の誓い」参照)です。「桃園の誓い」では、「レッドクリフ」にも登場する劉備、関羽、張飛の3人が自国の建国に対し協力し合うことを誓う場面が描かれています。当社でも社歴の古い者であればピンと来ることも多いと思うのですが、これが当社創業期における3役員の出会いのエピソードと似通う部分があるように個人的には思うのです。前期末の3月末に行われた社員総会(社員旅行中に実施)では、役員へ向けたサプライズ企画として「桃園の誓い」をパロディ化したオリジナル映像と、3役員の顔写真をモチーフとしてオリジナルで作成してもらった劉備、関羽、張飛を模したフィギュアが贈られたものでしたが、そんなことも思い出していました。

■2008年3月末の社員総会(社員旅行中に実施)で、当社役員へ三国志をモチーフとしたオリジナルフィギュアをプレゼント
社員総会.jpg

■劉備をモチーフとした社長のオリジナルフィギュア(拡大)

 

さて、一度語り出すと奥が深過ぎて途方に暮れてしまいそうな「三国志」、あるいは中国の歴史書の類については、特段ここで書かれるべきものといったわけでもありませんのでこの辺にしておき、冒頭でご紹介した「週刊ダイヤモンド」にも「仕事に生きる歴史の知識」などと書かれていましたが、確かに最近になって再び歴史のことについて、仕事に転化された内容の書籍が多く刊行・復刊されるようになってきたように感じます。これも時代のニーズの現れでしょうか。ニュース番組などでは、政治経済に関する事象やその他大型犯罪などがあると、過去の歴史を紹介して説明の補足としたりするような構成が見られます。今この世の中で起こっていることはすべて過去の歴史の延長上にあって連続性を帯びたものであるから、自身が把握している知識、あるいは自己の経験則のみから判断される断片的・画一的なメディア、ニュースの読み方には気をつけたいと思いました。

 

ドイツ帝国初代宰相のビスマルクが言ったとされる、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」ではありませんが、確かにビジネスシーンの多くのケースで、過去の歴史に頼ることは多いと思います。「レッドクリフ」でも度々出てくるセリフの中の「陣形」一つをとってみても、これはそのまま現代のビジネスシーンにおける「戦略」に置き換えることができるでしょう。それが「兵法書」を原典に過去の偉大な研究者が応用して持論を展開するなどして受け継がれ、また、太守や武将の思想が組織論やリーダーシップを説く際に転用されたりする内に、気が付けば少なくとも数千年分の歴史を振り返ることのできる現代に私たちは生きているのです。そしていつの時代も人は葛藤に悩んで自分と闘い、変えられない運命を呪い、問題解決の策を練り、「困った」「欲しい」を叶えるために発明し、苦悩して未来を切り拓いてきたことに気が付かされます。

 

私たちの普段の仕事の現場においても、数々の難題に直面することがしばしばあります。地球規模で言えば環境問題や宇宙開発(cf.「NASA 50th Anniversary Website」)、国家規模で言えば外交や内政、民族紛争や飢餓、また、経済界をリードする日本のトップレベルの産業界では金融危機や円高による経営リスクの発生といったように、私ではおよそ想像もつかないレベルの問題と直面しているのかと思いますが、私たちにも私たちなりに解決が難しい問題に常に直面しているのです。どうやって切り抜けたら良いのか、役職者同士集まって知恵を寄せ合っても到底解決できないのではないか?といったような内容のことも往々にしてあります。
そういったときに、過去に取り扱った事例の中にヒントになるものはないか?と振り返りができるように、CS部ではグランドスケジュールをエクセルで作成した年間カレンダーに記録し、部門目標や課題、人事・組織変更など、そのときそのときにどんな「モットー」を掲げ、どんな「変革」をしたのかを記録するようにしています。
また、それだけでは経験にしか学べないため、より視野を広げるための施策の一つとして「社内推奨図書」の仕組みを構築しました。業務に必要で社費で購入した書籍や雑誌、その他個人が有志で持参した書籍などが社内で散在していたため、書棚にまとめ、各書籍の裏表紙には図書館で言うところの“貸出カード”を貼付し、本を借りたい人が借りたいときに自由に借りられ、かつ紛失しにくい工夫をしてあります。後は当面は利用率を上げることが課題となっています。本はご存知のように、原典(オリジナル)を求めてさかのぼってゆく過程の中で多くの発見があります。この“読書”という行動こそが、過去の歴史に多くを学ぶことができる最短・最安・簡便な方法であると思っています。

 

「レッドクリフ」続編である「Part 2」は来年4月公開予定とのことで、今から大変待ち遠しいばかりです。その間も、目の前の課題と格闘しながら経験として残し、同時に過去の歴史に似た類型を探し求め、未来予測力を付ける癖を付けておこうと思います。その繰り返しがコンサルティング力を高めてくれるのだと思えば、自然と習慣化させて継続してゆくことができるのではないかと考えています。そうした成長のあゆみの中で、これからも多くのお客様と出会うことになるのかと思いますが、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。