「コンタクトセンター」発足から1年 ~「顧客の声(VOC)」に耳を傾けることの重要さ~

投稿者:小川 悟

2008/08/30 19:35

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信念のためには、たとえ敗れると分かっていても、おのれを貫く、そういう精神の高貴さがなくて、何が人間ぞと僕はいいたいんだ。
/『強く生きる言葉』(岡本太郎, 岡本敏子構成・監修)

今回は、CS部にある「コンタクトセンター」チームのご紹介をしたいと思います。
以前のコラム(「CS部(カスタマーサポート部)とミッション・ステートメントのご紹介」)で、当チームについて触れたことがありました。当社にコンタクトセンターが設置されて早いものでもう1年余りが経ちます。それ以前は、基本的には担当営業マンが取引先担当責任者として窓口となり、そのフォローをWebディレクターが行っておりました。組織の規模が小さく、顧客数が少ない頃は、こちらの方がお客様ともOne to Oneな関係が築け、両者ともに都合が良かったのです。ところが、一定の規模を超えたあたりから、今までのやり方では通用しなくなる感覚を感じ始めました。お客様が当社の「個人」に依存することで享受できるメリットは確かに多いかもしれません。しかし、仮に当社都合で担当者の役割や職位が変更となったとき、もしくは転勤・退職となった際、いくら引き継ぎをしっかりと行っても同様のサービスをご提供できるかどうかは分かりません。ですので、ある時期からは「組織」に依存して頂くことで、漏れのない均質なサービスをまずはご提供することを目指してゆく必要がありました。そうして発足したのが、今の「コンタクトセンター」チームです。

「コンタクトセンター」チームの主な機能としては、顧客折衝窓口業務と、お客様からのご相談に対する課題解決です。一般的に言われる「コンタクトセンター」ほど高度なソリューションを有しているわけではないかと思いますが、私たちのビジネスは法人様向けのサービスであり、インターネットを活用するソリューションとなりますので、お客様からのお問い合わせは電話だけに留まらずメールであったり、ときには訪問して問題を解決することもあります。そのため、「コールセンター」では仕事の役割を正確に示していないと考え、社内外への役割浸透も含めて「コンタクトセンター」と命名されました。

 

中小・ベンチャー企業様がWebサイトの構築を外部に委託する際、最も気にされているのが、納品後のアフターフォローです。売り切り(買い切り)での選択をされたのなら別ですが、Webサイトはご存知の通り構築して終わりではありません。納品されてからがスタートなのです。Webサイトを戦略的に運営してゆく中で、何度も大きな壁にぶつかることと思います。それは私たちも同じです。「どうすれば良くなるのか?」という簡単な命題ながら、それを完全に見極めて簡単に結果を出している企業はあまりないと思います。おそらくが試行錯誤の毎日で、常に「困った」「欲しい」状態が発生します。

私たちの有するコンタクトセンターの要諦は、まさにこの「困った」「欲しい」という既存顧客が抱える、潜在的にしろ顕在的にしろ、どう解決してよいか判断のつかない課題に対し、最も相応しい解決案を提案・実施することです。

しかし、私たちの「コンタクトセンター」も他の部署同様に発展途上の段階にあり、役割や目指す理想の形態については会社の成長に合わせて柔軟に変えてゆく必要があるものと思っています。しかしながら、松尾芭蕉の言う「不易流行」ではないですが、私たちを取り巻く環境の変化については常に柔軟に対応していかなくてはなりませんが、サービス業務上必須となる顧客窓口機能として絶対的に不変でなくてはならない考え方があると思います。それが、顧客満足度を向上させることです。

これを聞いて、「なんだ、当たり前じゃないか」と思う人も多いと思います。しかし、余程高度なソリューションを有した組織は別として、大半が「顧客が満足する」ではなく「顧客を満足させる」手段について論じ合っていたり、もしくは顧客を満足させるための手段について論じ合う過程で割れた意見をまとめること自体が目的となってしまっているケースも少なくないと思います。何よりもまず、「顧客の声」(VOC=Voice of the Customer)を収集して、分類・整理し、問題の本質を突き止めて課題解決のために優先順位付けをしてスケジュールを立ててゆく――、まさにマーケティング同様のステップが必要であると考えています。

 

それから、コンタクトセンター部門の設置に関してはCS部の次長が率先して動いてくれましたが、社内全体的な理解と協力は大変得やすかったと記憶しています。電話の鳴り分けや名刺に刷られる記載についての変更等のインフラ整備に始まり、体制に合わせた顧客データベースの再構築といった業務と連動した部分等。そうして初期メンバーとしてアサインした者は、創設期であるため主に正社員のみで構成し、前職も含め営業職とWebディレクター職、もしくはコールセンター業務の経験者のみで組織しました。

設置当時は、何か事あるごとに全力で対応させて頂いておりましたが、労働集約型の対応では限界があります。「ハインリッヒの法則」(cf.「ハインリッヒの法則」/Wikipedia)で言えば、大きな問題に対して解決したのみで、その問題発生に至る前の、もしくは潜在的な他大多数の中小の問題(ヒヤリ・ハット事例)の解決には至らないことが想像できました。

私自身も前職はカスタマーサポート業務に2年半従事しておりましたので多少の知識はありましたが、当時既に多くのお客様にご利用頂いておりましたので、今までのように力技で対応していたのでは、逆にご迷惑をお掛けしてしまうことになりかねないと、当時の体制をリスク要因の一つとして捉えました。経験則も重要ですが、当社にあって初めて組織されたチームですから、外部の知識を取り入れる必要があったのです。

そんなときに閲覧していたのが、ITmedia エンタープライズのコンタクトセンターが企業の顔になるという記事でした。自分が想像もできないことが、ある日突然実現するということもあるかもしれませんが、基本的には自分の想像の延長線上に描けるようになるまではゴールも存在しないと考えています。とにかく世の中にある事例を一つでも多く知りたい時期でした。この記事の中には、多くの企業様の苦悩と企業努力の賜物が詰まっており、大変影響を受けました。

続いて、月刊コンピューターテレフォニー誌の定期購読を始め、本誌の版元であるリックテレコム社が刊行された、『”顧客の声”分析・活用術 テキストマイニングが拓く――コールセンター高付加価値化への新たな提案』(株式会社野村総合研究所 テキストマイニング研究チーム/株式会社プラスアルファ・コンサルティング監修)や、『アウトバウンドの本―電話でお客様の心を捉え、企業のメッセージを伝える』(トランスコスモス著)にも目を通しました。また、先日当社も出展させて頂きました「第2回 Web2.0マーケティングフェア」では、本書でも紹介されている野村総合研究所様のソリューションもご出展されていましたが、そこで頂いたパンフレットにも目を通しました。

cf.コンタクトセンター・アワード 2008(主催:リックテレコム)
http://www.cc-award.com/

また、波多野精紀氏のWebサイト(「WEBマーケティング・コールセンター・CRMの市場通信」)を参考にさせて頂いたり、HDI(Help Desk Institute)が掲げている格付けの評価項目(「Help Desk Institute格付け」)を意識した目標設定なども行っているところです。ただし、いずれも今の私たちでは実現できないようなトップレベルの問題解決力が要され、実現のためにそれなりのコストもかかります。まずは、将来的に進むべき進路を業界標準に照準を合わせて策定しておきたいと考えています。

後々、コンタクトセンターとしての機能が成熟し、成果を上げるようになってきたときは、またご紹介する機会もあるかと思いますが、まずは簡単に現状をお伝えさせて頂くことにしました。

 

ところで、5年ほど前にHONDA「Stream」のCMで起用されたキャッチコピーに、「ポリシーは、あるか。」というものがありました。普段は車に乗ることが少ない私ですが、なぜかあのときこの短い一節の虜になっていました。言われてみれば、会社で何かを進言するとき、「その発言の内容にポリシーはあるか?」と自問してみると、一瞬ひるんでしまう自分がいたのです。

「ポリシー」とは”方針”と言い換えられます。つまり、問題解決の基本のフレームワークどころか、解決しなくてはならない強い理由さえも持ち合わせず、安易に目の前の問題に向かおうとしていたことがよくあったのです。ある程度現状を踏まえた上で先々を見越して打ち立てる計画でもなく、本質を理解しないまま部分最適のためのジャストアイデアを絞り出すのが精一杯だったのです。先ほどまでご紹介してきた事例はあくまでも手段に過ぎず、それを実行して何かしらの結論を得るのは結局当事者のみしかいません。「何をやるか?」の前に「何故やるか?」が大切ですね。

 

さて、9月――。コンタクトセンターが発足後、2年目に突入して少し経ってはいますが、まずは「お客様との対話(コミュニケーション)」に注力する月間としたいと考えています。受け入れ体制を構築するのにだいぶ時間がかかりましたが、今も発展途上ながら、再びお客様と共に成長を続けていけるよう、よりお客様の「困った」「欲しい」というニーズを満たせる組織にしていけるよう努力を続けてゆく所存です。引き続き宜しくお願い致します。