“キャリアプランニング”の過程で戦略思考を養う ~「役割期待を理解し、課題を設定・クリアする力」を身に付ける~

投稿者:小川 悟

2009/08/16 21:42

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「過去十年間は、何を損して何を得たのか。いまは何の商売をやって、その繁盛のようすはどうか。いまは何を仕入れて、いつどこでこれを売りさばくのか。ここ数年、心の店の取り締まりは行き届いていて、遊び癖や怠け癖などという店員のために、損失を出したことはないか。来年も同じ商売を続けていて大丈夫か。ほかにさらに知性や人格を磨く工夫はないか」とあれこれの帳簿を点検して、棚卸しの決算をすることがあれば、過去現在の自身の状態について、きっと不都合なところも見つかるだろう。

/『学問のすすめ 現代語訳 福澤諭吉』(齋藤孝訳)

夏季休暇を終え、明日から通常業務が始まります。休み前に、先月の合宿研修に続いてフォローというか続編に当たる管理者向け研修がありました。平均年齢が若い当社で働くスタッフにとって、外部講師を招いた研修ほど安心するものはありません。特にお客様の経営課題に向き合いWebコンサルティングを提供する者として、また、しっかりとしたWebコンサルティングを提供できる部下を育成していくために、「理想のリーダー」にならなくてはならない立場でもある管理者にとって、こうしたセミナーには思わず貪欲になってしまいます。

前回の合宿研修では、自身の使命を書き出して、会社のビジョンにリンクさせ、今期経営テーマである「百花繚乱」を実現する考え方について学びましたが、今回の研修では「ケプナー・トリゴー法(KT法)」など、具体的なメソッドについて学びました。 

今回のコラムでは、セミナーの詳細内容についての紹介に終始するのではなく、そこで私自身が感じたことについて書きたいと思います。

 

■IPAがITアーキテクトなど9職種の“理想の人生”を作成(ITpro,2009年8月11日)

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090811/335516/

上記のような記事がありました。記事中に「モデルキャリアを提示することで、学生や若手エンジニアに広がる将来への不安感の払拭を狙う」という一節があり、興味深く感じました。また、そういえば以前、以下のような記事があり、それが伏線となっていることを思い出しました。

■IT業界の「3K問題」 NTTデータ社長の考えは?(@IT,2007年5月9日)

http://www.atmarkit.co.jp/news/200705/09/nttdata.html

■IT業界不人気の理由は? 現役学生が語るそのネガティブイメージ(@IT,2007年10月31日)

http://www.atmarkit.co.jp/news/200710/31/ipa.html

最近では当社が提供する「Webコンサルティング」も、業界地図の中で見ればその一翼を担う社会的地位も得てきたと思いますが、業界経験や研究の浅い学生さんなどから見れば当社をはじめとした「Webコンサルティング企業」に対しても十把一絡げに同じようなイメージを抱かれる方も多いのではないかと想像しました。ただでさえ当社は創業ベンチャー企業ですし、インターネット普及による情報過多なども手伝って色眼鏡で見られる方も多いのではないかと客観視しました。また、「職業選択の自由」と権利は与えられていても、自由があるが故に「迷い」という表裏一体の心理状況も生まれるものと想像します。

事実、最近では2011年卒業見込みの学生さんの面接に立ち会うこともあり、この業界や当社へ対するイメージをお尋ねすることがあるのですが、インターンなどで職場体験をしたことのある方以外で明確に返答される方は少なく、多くの方が「期待と不安の入り混じったイメージ」を抱かれていることを実感します。それだけ仕事内容や扱っている商品・サービスが分かりにくいものなのかもしれません。そうした意味で、IPA(情報処理推進機構)がモデルキャリアを提示しようと動いてくれていることは間接的には助かります。

しかし、こうしたオーソライズされたモデルキャリアはあくまでもモデルであって、それが当事者にとってその通りになることを約束しているものではないのが注意したいところです。そのときの世の中や会社の状況、当事者の努力といった変数によって結果はいくらでも変わっていくものと思います。であるなら私は、「ぶれない軸」をそうした”(社会的)規範”に求めるよりも、”自分”に求めた方が良いと考えています。つまり、世の中や会社の状況がいかに変わろうと、そのとき最善の選択・行動をできるような人間になろう、という考え方です。ただでさえ、昨日正しかったやり方が今日になって通用しないというくらい時代の流れが速くなってきている昨今、表層的な方法論だけ知ったところで物事が思った通りに運ぶようには思えません。

「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」という有名なハムレットの独白で、彼が自分に向けた質問です。簡単に答えを出すことができない質問といってよいでしょう。子どもが親に甘えて「ぼく、どうしたらいいの」などというのも、本来は自問すべきもので、だから答えはないのです。

/『プロカウンセラーの聞く技術』(東山紘久著)

特に管理職、リーダー職となると、求められる選択は二律背反した内容がほとんどです。「顧客満足を追う一方で、数字を求められる」、「品質を上げろと言う一方で、コストを削減しろと言われる」、「成果を出せと言う一方で、部下の育成を求められる」など、挙げれば枚挙に暇がありません。

そのため悩むことも多いですが、私は「”悩む”なら答えが出るまで悩む」ようにしています。以前に「悩む前に考える」と表現したこともありますが、管理職・リーダー職の仕事は悩むことではなく、決断することが仕事です。散々悩んだ挙句に答えが出なかったら精神的に参ってしまうし、中途半端に悩むことだけは避けたいところです。さらに言えば、悩んだ時間は非生産的であり、上記のような判断を迫られるケースが今後も増えてくるのは避けられない事実であると予測すると、「悩む時間を最小に抑え、最適解を即断即決できる考え方」を身に付けていかねばなりません。

 

ところで、冒頭で福澤諭吉の著作から引用を行いました。福澤諭吉と言えば、今年初めに慶応義塾創立150年を記念した「未来をひらく福沢諭吉展」が東京上野で開催されました。現在は福岡を巡回して大阪で開催中のようですが、私は行き忘れてしまったため、22日からの神奈川県立歴史博物館の展示は機会があれば見に行きたいと思っているところです。

こんな昔に、今の時代で言う「キャリアプランニング」について書いていることは興味深いことですね。また、「棚卸し」というようにも書いていますが、自身のキャリアプランを練るには必須の考え方ですね。

このキャリアプランニングという思考過程は、WebコンサルティングやWebマーケティングを考える上でも重要になってくるのではないかと私は考えています。キャリアプランニングの一般的な過程は、まず自身の棚卸しからはじめ、強みや弱みを洗い出して、そこから自分が活躍できる機会など、自身の意義や価値を見出していきます。そこから実現したい理想の姿や障壁・課題を想定し、そこに行き着くためにどうすればよいかといった方法論を模索していきます。この行為を自分で行えない人のために、キャリアコンサルタント(アドバイザー)とか、キャリアカウンセラーといった専門家が存在するように、対象を自身から「自社のWeb戦略について、専門家からのアドバイスを期待する経営者」にスライドして考えれば、Webコンサルタントに求められている職能について洗い出してゆくことは可能そうです。

cf.期待される能力と役割 ミドルマネジャーの現状part2(産業能率大学 総合研究所)
http://www.hj.sanno.ac.jp/cgi-bin/WebObjects/107c2074456.woa/wa/read/11dad067f8d/

入社したばかりの頃は、上司の期待に応えられる社員を目指せばよいですが、職位や権限が上がるにつれて責任も増し、ステークホルダーも拡大し、部下やお客様など、同時に期待を満たさなくてはなりません。それぞれ求めていることは違う筈です。まずは、それぞれの役割期待(ニーズ)を認識するところから始まります。その上でそれぞれの目指すべき理想の姿(目標)を描き、そこに到達するためにクリアしなくてはならない課題を抽出し、実際にクリアするための方法論(戦略)を策定していきます。部内でこのような話をしたとき、慣れている人はホワイトボードにロジックツリーを書いて情報を整理しようとする者もいますが、慣れていないとなかなか絵(図)として頭の中に描けないようです。

情報を図像化することで、漏れの少ない情報交換ができるようになります。これで立場を違える同士で最適なコミュニケーションを図ることができます。当社は、CS本部だけでも様々な職種に分かれて協働していますので、コミュニケーションについても意識することは多いです。

このようにして、日々養われる戦略思考をお客様に提供し、またその際に得られた経験を社内での通常業務やマネジメント業務に生かすことで、提供サービスの質の向上やスピードアップを図っていきたいと思います。