社員総会を終えて今期ゴールビジョンを共有する ~古典に学ぶ、現代社会を生き抜くための知識・見識・胆識~

投稿者:小川 悟

2009/07/07 23:21

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今の若い人にとって、古典を読むのはなかなか難しいことだと思います。でも、もし自分を磨くために読んでみようと思うのなら、ぜひ手にとってもらいたいものです。(中略)やがて、自分の中に確固とした考え方が育まれていることに気づくと思います。

そのようにして古典によって育まれた考え方は、困難にぶつかり、人間いかに生きるべきか、いかに働くべきかと考えるときに、必ず大きな力となってくれるはずです。

/『何のために働くのか』(北尾吉孝著)

第一四半期を終え、7月4日は今期初の社員総会が渋谷で開かれました。東京・大阪・名古屋・福岡のメンバー、総勢約200名が一堂に介し、各部課のリーダーたちが全社員を前にゴールビジョンの発表をしたり、昇格者・各賞の表彰者を発表する機会でもあります。社員総会の開催理由等の詳細につきましては、当社代表の木村のコラムにてご覧下さい。

私がいつも楽しみにしているのは、決算内容や人事の発表、ベストマネジメント賞や四半期MVPなどももちろん楽しみではあるのですが、当社の掲げる行動指針に照らした「行動指針賞」という7つの各賞に、私の見るCS本部から誰が選ばれるのか?ということです。この賞ですと選考対象として管理者層以下からも選ばれやすいため、自部署からは誰が次期リーダー候補として何名頭角を現してきているのかということが大変気になってしまうのです。その結果こそが、私を含む管理者層のこの四半期の成果でもあるわけですから。お陰様で、この賞ではCS本部からは3名の受賞者を輩出することができました。 

実はこの社員総会を迎える少し前の7月1日、私事ではありますが、当社に入社して丸7年が経過し、34歳となりました。一回り近く若い世代の今期新卒などとも社員総会後のパーティーでお酒を交わすに、私も初心にかえったつもりで今期も頑張っていきたいと思いました。

 

さて、表題にもある「古典」ですが、昨今の先行き不透明な国政の中で、一筋の光明を見出すかのようにこの古典が復権の兆しを見せているというニュースをしばしば目にすることがありました。きっかけとなったのは、『蟹工船』なのか『カラマーゾフの兄弟』なのか諸説あるようですが、私も社会人になる前までは古典が好きでよく読んでおりました。これだけインターネットが普及する世の中にあっても、ビジネスの戦略上では今でも「孫子の兵法」などが引用されることも多く、かくいう私もこの孫子をはじめとした諸子百家が活躍した春秋戦国時代に始まり、秦の始皇帝、項羽と劉邦の時代を経て、三国志の時代に至るまでの中国古典の話に触れたコラムも書いたこともありました。最近でも、『プレジデント 2009.6.15号 迷いが晴れる歴史・古典入門』、『週刊 東洋経済 古典が今、おもしろい!【論語からケインズまで171冊】』と、古典を特集したビジネス誌が多く刊行されています。

今回のコラムでは、開国150年(cf.「インターネットがもたらす第三の開国の夜明け前 ~2009年、横浜開港150周年~」)に因んで、幕末維新にスポットを当ててみたいと思います。新選組局長であった近藤勇の下で坂本竜馬をはじめとした尊攘派(討幕派)志士を取り締まり、副長助勤の沖田総司と共に、幕府側の指揮官として新選組副長を務めた土方歳三が、その短い生涯を終えたのが今からちょうど140年前の1869年、まさに私と同年齢の34歳のときのことでした。

cf.

・『燃えよ剣』(司馬遼太郎著)

・NHK 松山放送局|スペシャルドラマ 坂の上の雲

http://www.nhk.or.jp/matsuyama/sakanoue/

昨年のゴールデンウィークには、今年の開国150周年を待ちきれずに、同僚を誘って土方歳三縁の地でもある函館・五稜郭へ行ってきました。

ナールデンは十七世紀にできた城塞都市で、榎本武揚が函館の五稜郭のモデルとしたことで知られる。ナールデンは六角形で、矢型の塁が特徴的である。強固な要塞都市であって、フランスのルイ一四世の攻撃にもかなり耐えた。函館の五稜郭は蘭学者武田斐三郎がフランスの築城書のオランダ語訳を参考に設計したもので(一八六四年完成)、五角形で大砲攻撃に強い設計となっている。

/『都市計画の世界史』(日端康雄著)

今では、見事なまでの五角形を呈した庭園を持つ観光地となっていますが、土方歳三の生きた歴史的な変革期にあっては堅牢な要塞であったのだろうと彷彿させるつくりをしていました。

 

ところで、この土方歳三を語る上で重要なキーワードとなってくるのが、「局中法度」と「軍中法度」です。それぞれ、新選組の理念に当たるのが「局中法度」で、行動指針に当たるのが「軍中法度」と言い換えられるかと思います。土方歳三は、新選組という組織を確固としたものにするために組織を組んで互いに牽制が利くように配置し、今のビジネス界でいうコーポレートガバナンスを敷きました。その中で、先の「局中法度」では「士道ニ背キ間敷事」など5か条を、敵中(仕事中)にいるときの指針である「軍中法度」では敵味方強弱の批判、一切停止の事他10か条を定めていて、これらの内容は現代に通ずるものもあるなと感じました。

 

今から150年近くも前の開国の時代にあって、この土方歳三をはじめとした、私と同世代の人たちが志を一つに自身の使命を全うしようとしている姿を古典の中に垣間見て、今回の社員総会で皆の前で発表したゴールビジョンがどうか「絵に描いた餅」にならないようにしたいと強く思いました。

そのために必要な考え方は、冒頭でも引用した、ご両親の影響で幼少時代より古典に傾倒したと言われる北尾吉孝氏の書かれた『何のために働くのか』でも触れられていますが、基本となるのは「知識・見識・胆識」かなと思いました。そこでは、見識を「物事が正しいか間違っているかという判断がつくこと」と言い、きちんと判断するために必要なものが、正しい知識であると言われています。そして、その見識を「実社会で実行する」能力のこと、「自分が正しいと思うことを堂々と行っていく実行力」のことを胆識と呼んでいます。

私たちCS本部の管理者は、こうした考えに倣って社員総会で掲げたゴールビジョンを実務レベルにまで落とし込んだガントチャートに起こし直し、毎月の面談時に使用することにしました。このガントチャートと併せて、以前にご紹介した「CS部成長のあゆみ」と「自己育成シート」(cf.「目標管理と人材育成、組織デザインについて ~「KPT法」による”ふりかえり”の実践と、コンピテンシーシートの活用~」)をうまく運用することこそが、全社的なビジョンをオペレーションを行ってもらっている層まで浸透させ、ミッションリンクを果たすための縦の意思疎通を可能にするコミュニケーションツールになり得るものだと考えています。

 

私たちは、Webコンサルタントとしてクライアントの抱える経営課題に向き合う中で、何が正しいのか判断することができなくてはならないし、そのための知識も必要です。そして、実際に掲げた課題をクリアするまでのプロセスを描き、やり遂げる実行力が必要とされています。まだまだお客様に勉強させて頂くことも多いですが、是非課題を共有頂き、共に打ち克つための戦略を練っていきましょう。