【ベトナム現地法人経営秘話】フリーセルベトナム各取材記事のご紹介、及び昨今の日本によるODA(政府開発援助)に関する記事について ~「どう伝えたかではなく、どう伝わったか」が重要だという話~

投稿者:小川 悟

2012/05/20 12:51

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歴史を振り返れば、アジアの成長に最も貢献したのは日本であろう。この半世紀、日本は開発協力を通じてアジアの基礎的なインフラを整備し、人々が自ら立ち上がる力を付けるための人材育成に集中してきた。このことが民間投資や貿易の呼び水となり、高い経済成長の起爆剤にもなった。他方、アジアの成長で最も利益を享受したのも日本である。東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済規模が1ドル拡大すれば日本にも6セントの受益があるとの報告もある。日本は貿易(輸出の37%、輸入の48%)も鉱物資源(62%)の確保も途上国に依存しているという現実を忘れてはならない。(JICA緒方貞子理事長,『読売新聞』2010年5月1日「論点」より)

/『日本のODAの国際評価 途上国新聞報道にみる日米英独仏』(戸川正人、友松篤信著)

 

昨日19日は、今のベトナムを独立に導いた時の国家主席兼首相に就任したホー・チ・ミン氏の誕生日でした。

フリーセルベトナム(以下、「FVN」)や私の住居のあるホーチミン市内でも至るところでホー・チ・ミン氏の肖像が描かれた看板が設置されたり、タクシーに乗っていても車載ラジオでは、(意味を理解できないまでも)「ホー・チ・ミン」と何度も発声するのが聞こえたり、ドライバーが看板を指さしてその旨を説明してくれたり、その日は終日外出をして「ベトナムらしさ」を感じていました。

1945年9月2日、第二次世界大戦が日本のポツダム宣言調印によって正式に終結、同日にそれまで一時的に日本の傘下に置かれた傀儡国家ベトナム帝国が消滅し、ホー・チ・ミン氏によってベトナム民主共和国の独立宣言がなされた(ベトナム戦争終結後の1976年7月2日に南北ベトナムの再統一とベトナム社会主義共和国の成立が宣言される)――というのが歴史の教科書に書かれてある内容ですが、現在のホーチミン市(旧都市名:サイゴン,サイゴン駅の駅名やタンソンニャット国際空港のコード「SGN」に名残があります)の名称の由来にもなっており、ベトナム国民の間では最も親しみのある名前ではないでしょうか。

また、先月4月30日は「南部解放記念日」ということで、翌日5月1日のメーデーと合わせて4連休となり、祝日の少ないベトナムで私にとっては赴任後初の大型連休となり、スタッフを誘ってホーチミン市内から近場に遊びに行っていました。

 

30日には、観光名所として名高いベンタイン市場前の公園内の特設ステージで「南部解放記念日」にまつわるイベントがあり観覧してきました。

 

 

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ベトナム戦争終結37周年と「勝利の歌」という意味の文字が掲げられ、著名な歌手を招いて歌と踊りと幕間のスピーチで進行するイベントでした。当然、私がベトナム語を理解できないため、雰囲気だけの鑑賞となってしまったことは残念ではありましたが、スタッフが要所要所で説明をくれるのでいくらか参考になりました。

私たちの世代は「戦争を知らない世代」と言われます。

私の高校時代に授業の中で「聞き書き」という内容があり、作文(や随筆)でも読書感想文でもなく、身近な人に取材をして事実と主観を述べるという類の課題でしたが、私はギリギリ戦中派だった父親の戦争体験を書きました。

終戦当時小学4年生だった父の記憶――、徹底した上意下達とイジメとが混在する正当化されたヒエラルキーが蔓延していた学童疎開から戻ったばかりの、見渡すばかり一面焼け野原となった東京都内某所で、それまでの国の方針であった金属回収によって調理器具どころか縫い針一本に至るまで没収され、国の配給はと言えば、軍人のために脂という脂を絞り切ったトウモロコシの皮の部分だけが庶民に提供され、乾燥した無味無臭のトウモロコシの皮を熱湯でいかに増やして満腹感を得るかだけを考え、その日1日を生き延びるための食費捻出のために全ての家財道具を売り払い、文字通り布団一枚すらなくなった六畳一間のボロボロの借家で家族と身を寄せ合って聴いた玉音放送という舞台設定――を主軸に、私の世代とのジェネレーションギャップを表現するということをテーマにして書いた記憶があります。

 

先に書いた「南部解放記念日」である4月30日は、立場によって「サイゴン陥落」、「サイゴン解放」とも呼称されます。上記の追体験等から私は、ジェネレーションギャップだけでなく、ポジションギャップというかシチュエーションギャップのようなものに興味が派生していったのかもしれません。

 

 

 

さて、そんな4月~5月にかけてFVNでは、事業ライセンス認可後、業務が本格化してきました。まだ現地法人設立前後の処理等で慌ただしいことも多いですが、FVNのスタッフ数は着々と微増し、事業に対する理解も深めてもらい、既存スタッフとのコミュニケーションも良好で、私としては彼らに支えられるようにモチベーションを上げているところです。

そうした中、現地の多くのメディアに採り上げて頂き、ありがたく思っております。
簡単にですが、以下にまとめてご紹介したいと思います。

■2012年3月20日「NNA.ASIA」

http://news.nna.jp/free/news/20120320icn004A_lead.html


■2012年3月22日「Saigon Times」、以下はオンライン版(ベトナム語)と英語版

http://bit.ly/GI8uCo

http://businesstimes.com.vn/japanese-web-design-firm-enters-vietnam/

■2012年4月4日週号「週刊Vetter」、上記「NNA.ASIA」記事提供

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■2012年5月2日「Dau tu ~Vietnam Investment Review~」

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以下はオンライン版(ベトナム語)
http://bit.ly/My4Zmk

 

 

 

同時に、日本やベトナムを中心に見て、昨今のグローバル化の側面でも大きなニュースが多く重なった時期でもあったように感じています。

■年初4か月の日本からの投資(認可ベース)、全体の67%を占める(「VIETJO ベトナムニュース」,2012年5月16日)

http://www.viet-jo.com/newsallow/statistics/120516102107.html


cf.

・ベトナム ホーチミン市郊外ビンズン省での都市開発に着手 現地のBECAMEX IDC CORP.と合弁会社を設立(2012/2/27)|ニュースリース|東急電鉄

http://www.tokyu.co.jp/contents_index/guide/news/120227.html

・ベトナム 日本からの投資件数が過去最多 – インターネット放送局 – テレビ番組「世界は今 ‐JETRO Global Eye」 – ジェトロ

http://www.jetro.go.jp/tv/internet/20111121434.html

ASEAN 日本との経済関係強化 – インターネット放送局 – テレビ番組「世界は今 ‐JETRO Global Eye」 – ジェトロ

http://www.jetro.go.jp/tv/internet/20120521683.html

ベトナム進出企業の実態調査 | 帝国データバンク

http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p120201.html

 

 

大半が東急電鉄による都市開発事業とはいえ、上記記事に書かれた時期はちょうどFVNの進出時期とも重なります。

昨今の日本企業による海外進出(主にASEAN地域)の勢いを肌で感じることも多くなってきました。まさにニュースが歴史の断面であり、小さいながらも私たちもその断面を形成している一員であることを実感できます。同時に当事者の一員としてこの勢いに便乗していきたいと考えています。

 

 

また、他にも以下のような関連記事が連日のように続々と公開されています。

 


■米製造業が「メードインUSA」に回帰、中国の人件費高騰など背景(「Reuters」,2012年4月20日)

http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPTYE83J03Y20120420

■25年ぶり円借款再開 民主化支援で投資促進 日ミャンマー首脳会談(「MSN産経ニュース」,2012年4月21日)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120421/plc12042117500009-n1.htm

■首相、3年でODA6000億円表明 日メコン首脳会議(「MSN産経ニュース」,2012年4月21日)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120421/plc12042112080007-n1.htm

■特別リポート:中国で「第二の人生」歩む、日本の熟練技術者たち(「Reuters」,2012年4月23日)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE83M01X2012042

■ベトナム首相、日本に南シナ海への介入求める(1)(「Searchaina」,2012年4月24日)
http://bit.ly/IlO3Mv

■日本、ASEANの勢いを借りてアジアでの影響力拡大狙う(1)(「Searchaina」,2012年4月24日)
http://bit.ly/I81h0f

■カンボジアで起業すべき10の理由(「日経ビジネスオンライン」,2012年5月2日)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120427/231485/

■企業の「ミャンマー詣」活況 安い人件費、消費市場としても魅力 (1/2)(「J-CASTニュース」,2012年5月3日)
http://www.j-cast.com/2012/05/03130971.html

■東南アジアへの金銭外交、日中の競争は東南アジアへ(1)(「Searchaina」,2012年5月3日)
http://bit.ly/K0JZRN

中国は日本の対東南アジア戦略に学べ(1)(「Searchaina」,2012年5月9日)
http://bit.ly/ILLW77

■民政移管ミャンマー:「謎の国」有望市場に 日本企業が熱視線- 毎日jp(「毎日新聞」,2012年5月10日)
http://mainichi.jp/select/news/20120510mog00m040016000c.html

 

これらは少なくとも人によって執筆や編集がされるために偏向報道が皆無とは言い切れないですが、報道という事象そのものも含めて「報道されている事実」を、「読む」側である私たちがどう捉えるかも重要になってきます。

「世界(経済)は感情で動く」(cf.『経済は感情で動く―― はじめての行動経済学』、『世界は感情で動く (行動経済学からみる脳のトラップ) 』,マッテオ・モッテルリーニ著)ではありませんが、もしかすると極無意識に世界的なスキームや周囲の動きに呼応する形で、私たちは意思決定をすることがあるかもしれません。そのとき、良くも悪くも身近なインフルエンサーとして機能する代表的なものがマスコミです。まさに「媒体(メディア)」ですね。そういう点でも、昨今の日本企業によるASEAN進出が一時的、あるいは継続的に加速していきそうな傾向であることは想像がつきます。

 

 

なお、冒頭に挙げた『日本のODAの国際評価 途上国新聞報道にみる日米英独仏』には興味深い内容が書かれています。

 

経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)の統計データをベースにして、時に「顔の見えない援助」と揶揄されることのある新興国に対する日本のODA(=Official Development Assistance=政府開発援助)を中心とした開発援助について、現地新聞報道を調査対象にレピュテーション(評判)を指数化して浸透度や効果を測定しようと試みた内容ですが、研究対象国としてベトナムがメインに書かれています。

 

理由としては、1998年から2007年までの10年間の内、ODA受取額上位10位中に9年間含まれているため調査対象に相応しいからとされています(ちなみに、10年間毎年含まれているのが中国一か国のみですが、中国は昨今アフリカ諸国をはじめ、アジアの近隣諸国への援助も加速させており、援助国の側面も持つため調査対象から外されています)。

 

結論から言うと、ベトナムにおける最大の援助国は日本であり、日本のレピュテーションは世界5大援助国(日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ)の中で、トップドナーにふさわしく質量ともに1位であるということが書かれています。つまり、開発援助に関連した好意的な内容の新聞記事件数・文字数が一番多かったという話です(援助規模あたりではない)。

 

cf.ベトナム 2012年も日本が最大支援国に – インターネット放送局 – テレビ番組「世界は今 ‐JETRO Global Eye」 – ジェトロ

http://www.jetro.go.jp/tv/internet/20111226270.html

 

そうした歴史の連続性の中で、実は私たちも知らず知らずの内に便宜を得ていることも多いものです。

 

そもそもタンソンニャット国際空港は日本のODAによって作られたものですし、最近でも以下のような実績があり、私もスタッフのバイクに乗せてもらって実際に利用し、開通前後でどのように便宜が図られたのか説明を受けながらベトナム人の追体験をしてきたことがあります。

 

■トゥーティエムトンネル開通:550億円の東西ハイウエー完成(「NNA.ASIA」,2011年11月21日)
http://news.nna.jp/free/news/20111121icn001A.html

cf.JICA Knowledge Site – プロジェクト情報 – 予算年度別一覧「ベトナム」
http://bit.ly/L99i5e

cf.Bitexco Financial Tower展望台から私が撮影したトゥーティエムトンネルの写真

20120323_finansialtower.JPG

 

※2011年7月時点(完成前)に撮影したものはこちら

 

それらの積み重ねの結果かどうかは分かりませんが、原発対応等で昨年、「世界最悪企業2012(Worst company of the year 2012)」2位の汚名を着せられた(cf. http://www.web-consultants.jp/column/ogawa/2012/01/post-73.html )ものの、以下のような嬉しいニュースもありましたね。

 

■「世界に良い影響」日本トップ…BBC読売調査 : 国際 : YOMIURI ONLINE(「読売新聞」,2012年5月10日)

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120510-OYT1T01606.htm


そもそも新興国に対する日本の開発援助は戦後賠償に端を発したものですが、援助実績や時の経過(あるいは日本の外交戦略、広報戦略)とともに、まさに「民間投資や貿易の呼び水」となって、商社や銀行等を筆頭に新興国のインフラが整備された後は、当社のような中小企業がこぞって進出する結果を招いてきました。

 

ともすると敷かれたレールの上を走らされているような錯覚にも陥りますが、逆に上位方針をどれだけ理解、補完して行動し、その享受にあやかり、時に提言(進言)や相談を挟みながら望ましくない方向に持っていかないようにするかについても考えさせられます。

 

その発想の構造はまさにビジネス――、もっと平易に言えば縮図としての職場そのものですが、当社のような民間企業に今求められているのは、こういった統合力、総合力ではないのかと感じることもあります。

 

先の書籍にも書かれていますが、端的に言って投資対効果が求められるのであれば、レピュテーション(評判)の評価やアカウンタビリティをはじめとして強く意識しなければならない要素があるということです。

 

 

小さな枠組みに置き換えて考えれば、FVNが設立したことによって享受される本社や顧客のベネフィットについて、当然それを生むための戦略立案と行動は大前提ですが、効果を証明できる「顧客の声(VOC)」や「社内の声(VOE)」が欲しくなります。

 

当社で言えば、前者はサイト納品時顧客満足度アンケート、後者は「Job Manager」という相互評価の仕組み(納品の都度、依頼側の依頼精度や受託側の成果物についてを両社間で評価する仕組み)を導入しています。

 

さらにブレイクダウンすれば上司と部下、サービス提供企業と顧客といった関係構造にも適用できます。

 

「言ってるのに理解してもらえない」――、まさに「どう伝えたかではなく、どう伝わったか」が重要だということです。

 

特にベトナムにおいては言語や認知の壁もあってハードルは高くなると思いますが、その分意識を強く持てるので、常に「どう伝えたかではなく、どう伝わったか」を意識しながら、現実に翻弄されるのではなく現実を活用できるように会社として、個人として力を付けていきたいと考えています。

 

また、「どう伝えたかではなく、どう伝わったか」という考え方は、Webサイトというコミュニケーションデザインの最たるものについても適用できる考え方ですので、当社のような事業を提供する企業にとっては不可欠な考え方です。

 

引き続き、フリーセルグループ一丸となって努力していきますのでどうぞ宜しくお願い致します。