「As I can.――もし、私にできるならば」 ~一人ひとりが自分にできることを精一杯に行う~

投稿者:小川 悟

2011/03/21 14:56

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As I can.――もし、私にできるならば、という言葉があります。

/『生活の芸術化 ラスキン、モリスと現代』(池上惇著)

まずはじめに、この度2011年3月11日(金)に発生した東日本大震災により、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々、並びに関係者の方々に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。


宮城県三陸沖を震源地として起こったマグニチュード9.0の巨大地震は、当初M8.4と報道され、夕方にM8.8に修正され、13日午後にはM9.0と気象庁から発表がありました。


11日当日私は、東京都渋谷区にある本社の入るビルでいつも通り仕事をしていました。突然襲った地震でしたが、今までこんなに揺れたことはないというくらいに揺れ、しばらくすると屋外退去の指示があり外に出ました。目の前の国道にはパトカーが走り交通整理を行っていましたが、アナウンスが殺気立っていて、尋常な雰囲気ではありませんでした。


しかし、家族に連絡を入れようにも携帯電話が繋がりませんし、会社内でテレビが映らないので情報が全く入ってきません。近隣のビルの社員の方と話したり、TwitterやFacebookで断片的に入ってくる情報を頼りに、揺れが収まるのを待ってオフィスに戻りました。その日は交通機関が混乱・麻痺していることもあり早めの退社が促され、職場への宿泊も認められました。


その後、ネットニュースやUstreamで情報を集めている内に、被害の全容が段々に分かってきて、その日以降、地震や津波に端を発した原発問題などの二次災害、他にも計画停電措置の発表や、大規模な節電の呼び掛け、首都圏では多く起こった生活必需品の買い占め騒動など、今まで多くの人たちが経験したこともない事態が起こり、誰もがどうするべきか判断できない状況下で、ネット上では多くのデマや不確かな情報が飛び交い、それによって増幅された不安が引き起こした集団パニックの光景が、さらに人々の不安を最大限に募らせていったのは説明するまでもありません。

 

当社スタッフの中には、打ち合わせのために、地震発生の時間帯にお客様先に訪問していた者も多かったのですが、その内の数名に確認すると、訪問先の会社の社長様が陣頭指揮をとって、スタッフさんに的確に指示を出し、迅速に防災グッズを手配し、避難誘導までを大きな声でされていたようで、「大変ありがたいと思ったし、このような誰も経験したことのない規模の地震で緊迫した事態にあって、冷静且つ、統率の利いたビシッとした安全配慮ができていたものだから、不謹慎かもしれないがそのような状況下にありながら感心してしまった」と申しておりました。一例ではありますが、他に当社スタッフがもお世話になったケースは多いかと思いますが、この場を借りてお礼申し上げます。

 

当社では全スタッフの安否の確認を取った後、実家が福島県や宮城県、茨城県にあり、家族としばらく連絡がとれないという状況が長く続いたスタッフも多くいました。また、リリース(「東北エリアの当社代理店、株式会社エントラスト(仙台市)の対応について」)も出しましたが、代理店様の本社事務所が仙台にあり、当日は連絡が付かず当社関係スタッフが安否を気にしておりました。幸いに無事は確認できましたが、オフィス内は物が散乱しており、ライフラインが断絶されており、営業活動は停止せざるを得ない状況とのことでした。

 

当社では、週が明けた14日も、不安と慌ただしさの混在した中で何とか通常業務を続けることができました。被災地の方のために私たちにすぐできることは、私たち自身が精神的不安に苛まされることなく、冷静になって今の仕事を頑張ることしか即座に考えられませんでした。

 

担当しているお客様の安否確認の電話をするスタッフ、当社各拠点長と連絡を取り合って協力体制を迅速に築こうとするスタッフ、お客様のWebサイトデータを扱う提携先企業様へ連絡を取って計画停電に対する影響範囲を調査するスタッフ、計画停電の影響で出社困難となったスタッフから納期が近づいている業務を巻き取っていつもより遅い時間まで働いたスタッフ、いつもなら軽い小競り合いがあってもいいようなやり取りの中にも、そうした不満は一切なく、お互いが事情を察しながら仕事に取り組めたのは不幸中の幸いであったかもしれません。

 

私たちは既存のお客様に対して月に1度メールマガジンを配信しておりました。社長様に限らず、ご希望される社員の方にも配信しているため、購読者数は4000人以上となっております。そうした中で、メールマガジン編集担当スタッフが、「私たち一スタッフが会社の決裁を待たずにすぐにできることをご案内しよう」と各部門とネゴシエーションを取って実施したのが、ご提供中のWebサイトへ告知する文章の見本を提案し、修正業務を受け付けるというもの。それから、有益な情報を展開することも意識しました。

■東北地方太平洋沖地震にWeb/携帯から募金する方法まとめ(「nanapi」より)

http://nanapi.jp/24717/

■Yahoo!地図 計画停電MAP

http://map.yahoo.co.jp/pl?fa=whm&group=0

上記などはその一例です。当然と言えば当然の対応かもしれませんが、当社スタッフも全員が出揃っている状況ではない中、まずは当社から先にご一報を入れたく、そのようにした次第でした。また、代理店様が営業休止となった関係で、代理店のお客様へ対するフォロー電話などもお手伝いさせて頂きました。お客様も、お客様のお客様や消費者対応に追われる中、せめて私たちも自社内の問題から枠をはみ出て考える必要があると感じていました。

 

被災地や関係する方々にとって、今回の災害による問題が解決したわけではありませんし課題は山積みであると思います。首都圏も計画停電の影響があったり、原発や余震・誘発地震のリスクに対する不安が完全に収まったわけでもありませんが、当社はまだまだ健全で動ける立場にある筈です。もちろん普段とは状況も異なり、やりにくいことが発生したり、できていたことができなくなったりしたこともあります。また、少なからず精神的なダメージもあった震災ではありますが、そういうときだからこそスタッフ一人ひとりが相手を思いやり、今自分に何ができるか?を一番に考えて行動していけるように強く意識することが重要になってくるのかと思います。

 

最後になりますが、SBIホールディングス株式会社の代表取締役執行役員CEOである北尾吉孝氏が今年の年頭所感で以下のようなことを書かれていました。


■『年頭所感』|北尾吉孝日記(SBIホールディングス株式会社運営

http://www.sbi-com.jp/kitao_diary/archives/201101042379.html


「辛卯の年」の言われについては私もコラム(cf.「映画『ソーシャル・ネットワーク』を観て視野を拡げる ~2011年「辛卯」の年、当社設立10周年を迎える年は明るい年に!~」)で採り上げ、他にも多くの方が採り上げていたかと思います。私は特段この記載に先見性や共時性、もしくは迷信――、古くからの言われを盲信して言うわけではないことは事前に断らせて頂きつつ言うならば、悪い方の言われが当たってしまった以上、もう一つの良い方の意味合いも当たってほしいと願うばかりです。

 

日本の東北沿岸部から房総沖一帯という地域は、沖に日本海溝がある関係で、今までにも地震や津波の脅威に多く晒されており、そのために防波堤などはかなりの強度で造られていたと言われます。先述の代理店の社長は震災の起こる前から断続的に続いていた規模の大きな地震について、ご自身のブログやSNSに懸念を示されていた矢先のことでした。

今回の災害では、そうした防波堤さえも決壊するほどの破壊力の津波が襲いました。まさに未曾有の自然災害であり、完全な復旧・復興までは数年がかかると思いますが、今の今はただ、少しでも多くの被災者の方の無事が確認でき、ライフラインを断たれた被災地で不便を強いられている多くの方が普通の生活を一刻も早く取り戻せるようになることを、心よりお祈り申し上げたく思います。