映画『ソーシャル・ネットワーク』を観て視野を拡げる ~2011年「辛卯」の年、当社設立10周年を迎える年は明るい年に!~

投稿者:小川 悟

2011/01/26 11:53

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ネットの進化は個人の行動パターンを変え、既存産業の製品・サービス、売り方さえ変えつつある。いまだ最先端にある日本のネット技術やモバイルのノウハウを死蔵することなく、ネット業界が本格的に興隆すれば、日本経済再生の道もまた、開けてくる。

/『ソーシャル・ネット経済圏』(日経ビジネス・日経デジタルマーケティング編著)

皆さんこんにちは。2011年、最初のコラムとなります。今年もどうぞ宜しくお願い致します。

 

今年の干支は「卯」ですね。実は私、年男(4月で36歳)になります。いつの間にこんなに歳を重ねたのかと、日々焦る毎日を過ごしております(汗)。

「干支」と言うからには、「十干(じっかん)」と「十二支」を掛け合わせ、正確に言うならば「辛卯(かのとう、しんぼう)」の年ということになりますか。この「辛卯」ですが、今月15日で誕生10周年を迎えた「Wikipedia」によれば、「西暦年を60で割って31が余る年が辛卯の年」となり、60年に1度しか巡ってこない年だそうです。個人的には、このようにロマンティックに解釈すれば同じ卯年でも刹那的になり、より一層頑張らなくては!という気持ちに駆り立てられてきます(笑)。

 

cf.卯年は株式市場「最強」の年? 跳ねるうさぎの飛躍の年(「東洋経済オンライン」,2010年12月07日)

http://bit.ly/f6wDjx

 

さて、先の「Wikipedia」が10周年を迎えた2011年、便乗して言えば当社も8月で10周年を迎えます。そんな15日(土)、当社では管理職向けの研修があり、各拠点の管理職も含め本社に集まりました。このことについては、CS本部の松谷がコラムに書いていますのでご参考下さい。 研修をファシリテートして下さる外部コンサルタントの方からは、普段私が意識していないようなお話を聞くことができ、毎回ハッと気付かされることも多いです。

今回の研修の中でもマクロ環境について話し合う時間があり、そこで、韓国企業は今なぜ強いのか?という話題があり、国家的な戦略として私企業を支援しているというような話がありました。日本でも法人減税の議論が出ていますが、まずは私企業が、というのはもちろん、日本経済ひいては世界経済が好転する政策になれば良いなと感じています。

 

――研修終了後、私はかねてより同僚と行こうと言っていた、映画『ソーシャル・ネットワークを観に行きました。日本で公開される前から話題の映画で、ゴールデン・グローブ賞では最優秀作品賞を含め4冠、アカデミー賞では作品賞など8部門にノミネートされました。

映画を観る前までは、率直にFacebookを知らない人が見て、面白く感じる映画なんだろうか?と疑問に感じていたのですが、他にもIT業界の人、Facebookをはじめとした各SNSの利用ユーザー、起業家・投資家、映画好き、監督(デヴィッド・フィンチャー)作品好き、米名門大学の校風に興味を持つ方等、客層を想像しましたが、今になってよくよく考えてみれば、いわゆる今の「Facebook」の楽しさについて描かれているわけではないので、多くの方が興味深く観ることができる映画かもしれないし、話題性から新規で登録する人も増えるのではないかと思いました。

 

今回のコラムでは、私がこの映画を観て感じたことを織り交ぜながら、まずは今年最初のコラムということで、景気の良い話をして関わる方々を元気にしていこうという気持ちを表明したいと思います。

 

昨今ネット上のニュースでも、特に「Facebook」の話題が多いですね。運営元のFacebook, Inc.は2004年に創業、創業者のマーク・ザッカーバーグ氏が創り出したSNS(Social Networking Service)、「Facebook」は2011年1月15日時点で時価総額500億ドル(約4.2兆円)、ユーザー数6億人に迫り、その膨大なユーザー数から一つの国家として、「中国、インド、フェイスブック」と例えられる規模のサービスに成長しています。確かにここまでくると、「文化」を超えてもはや「文明」ですね。

 

cf.CheckFacebook(各国のFacebook利用者数や属性を見ることができます)

http://www.checkfacebook.com/

 

『Facebook 世界を征するソーシャルプラットフォーム』(山脇伸介著)というタイトルの新書も出ていますが、Facebookのような巨大SNSが話題になったことで、「プラットフォーム」(cf.大前研一氏)という言葉がしばらくキーになってきそうです。

つい先日は、米Appleが提供する「App Store」でのコンテンツダウンロード件数が100億件を突破したとリリースがあり、キリ番を踏んだ方とダウンロードしたゲームが公式サイト内(cf.「アップル – iTunes – 100億Appカウントダウン」)で紹介されていましたね。今のようにITが変えた、フラット化された世の中においては、ゲームや音楽、本(、靴でさえも!)を購入するのに、リアルな店舗に行かなくても購入できるようになってきました。

 

このように港をおさえたり、流通をうまくコントロールして主導権を握ってきた日本の企業について、私も岩崎弥太郎(cf.「2010年、フリーセル創業10年目という節目、お客様に感謝の気持ちと原点回帰の想い ~大河ドラマ『龍馬伝』を見て感じたことなど~」)やTSUTAYA(cf.「「日本の広告費 2009年」発表、新聞を抜きテレビに次ぐ第2のメディアとなったインターネット ~マクロ環境から読み解く、「モノの流通」から「情報の流通」への大転換期~」)を引き合いに出して私見を述べさせて頂いたことがありました。 

たとえば、通信会社であるNTTドコモは、もはや業界トップ10に入るクレジットカード会社になっています。アップルはパソコンメーカーというよりもすでに音楽配信事業者・音楽携帯端末メーカーという位置づけでしょう。こうした動きはアマゾンやグーグルによる電子書籍端末の発売においてさらに加速していくでしょう。

/『21世紀の競争を支配する「場をつくる」技術 プラットフォーム戦略』(平野敦士カール、アンドレイ・ハギウ著)

 

『週刊ダイヤモンド』最新号の特集も、「2011年フェイスブック(Facebook)の旅」で、この「ソーシャルプラットフォーム」を上手く活用した事例として一部で話題になったかと思います。表紙に約500のユーザーのアイコンが散りばめられ、雑誌の表紙としては大変インパクトがありました。これは、同誌2010年1/23号の「2010年ツイッター(Twitter)の旅」に続いて、Twitterでフォロワーを募集したキャンペーンの要領を再び活用し、今度はFacebook内ファンページ登録を促したマーケティングでしたが、このアイコン祭りをTwitterでも呼び掛けることで口コミ効果で拡がりファンページの登録者を増やし、雑誌も売れ、さらにFacebookの認知度が上がり利用者が増えるという相乗効果があり、メディアミックスの好例だと思いました。

 

そして――、

創業者のマーク・ザッカーバーグが言っているのは、(中略)フェイスブックを活用すればこういう未来が来ると、自分たちもはっきりわかってやっているわけではない。むしろ、使っている人たちが想像しながら創造するものなんだというメッセージングをしています。

/『週刊ダイヤモンド』 2011年1/29号「2011年フェイスブック(Facebook)の旅」、フェイスブック日本支社代表 児玉太郎氏のインタビュー記事より。

――上記にもあるように、「mixi」や「GREE」の黎明期の秘話にも通ずるような、まさにSNSをSNSたらしめている「ソーシャル・ネットワーク」を活かした手法で面白いと感じました。

 

cf.

・Webサービスのビジネスモデルはユーザーが考える時代?(「ITmediaニュース」,2004/08/23

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0408/23/news032.html

・「それでいい、楽しいから」――7万人の町「GREE」を一人で作ってる会社員(「ITmediaニュース」,2004/07/30)

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0407/30/news006.html

・【mixi版】無敵会議

http://mixi.jp/view_community.pl?id=17965

※「mixi」内のコミュニティ(要ログイン)

 

日本の代表的なSNSである「mixi」や「GREE」、「モバゲータウン」、あるいは「カフェスタ」あたりとの比較については他サイトでいくらでも論じられていますので割愛しますが、企業にとっては商用利用が許され、かつファンページの設置自体は無料のため、参入しやすいからか先般より参入企業が増えているという記事も見かけます。

また、よく言われるのが「実名制」を採用しており、さらにFacebookインサイトという分析機能があるため、ファンページへの登録ユーザー数をマスに近いくらい伸ばせるブランド力・集客力を持った大手企業であれば、これほど初期コストがかからず、リスクの少ないマーケティング手段はないのではないかとも思えてきます。

 

ところがこれだけ話題になっているFacebookも、日本の登録ユーザー数は現在200万人程度と言われます。先の「mixi」や「GREE」、「モバゲータウン」が2000万人以上であるのに比べると、一長一短を感じる人がいてもおかしくありません。Facebookにしても、この手の議論によく引き合いに出される、世界最大の3D仮想世界コミュニティ「Second Life」にしても、日本で成功する、受け入れられるかどうかの成否を決める要素の一つに「言葉や文化の壁」を感じました。事実、冒頭に引用した『ソーシャル・ネット経済圏』に登場する、米グルーポン、英プレイフィッシュ、米エバーノート、「ハンゲーム」のNHN Japanの経営陣からも「日本語は難しい」という声が聞かれます。

 

TwitterやFacebookの日本への進出、流行の様があまりにセンセーショナルで、「プラットフォーム戦争」などとも騒がれるために、規模の大きなものやAPIの公開によるオープン化が進んだプラットフォームを画一的に評価する意見も耳にしますが、同じプラットフォーム戦争でも、「ベータ VS VHS」戦争のときのような規格寄りの競争でもなく、各社次世代ゲーム機のコンセプトや準じるソフトの質の競争というものでもなく、SNSの競争の軸はソーシャル・ゲームにしても、ソーシャル・グラフにしても、あくまでも「コミュニケーション」から生まれるものではないのかと感じています。その「コミュニケーション」を形成する主な要素が「言語」と「文化」かと考えています。

分かりやすく言えば、6億人が集まるFacebook内のゲームアプリに、Zynga社の「Frontierville」や「FarmVille」、「CityVille」といった、どれもMAU(monthly active users)が数千万人規模のゲームがあります。例えばこれらのソーシャル・ゲームの遊び方やルールは大抵同じですし操作も簡単ではあるのですが、非英語圏にいる私たちにとってみると、英語を主言語とするゲームでプレイするのに抵抗を感じませんか?上記の内「FarmVille」は、昨年末にmixiモバイル上に「ファームビレッジ」として移植されましたが、ここまできれいに移植されれば十分に楽しめます。しかし、他社や個人開発のどのゲームもすべてがここまでうまく移植されるとは思えません。結局日本ではプラットフォーム自体の利用者数やゲーム自体の面白さや話題性も重要かもしれませんが、それ以前に、日本語にきれいに訳され、グループでの行動を促すような日本人の好む文化にゲームコンテンツを溶け込ませないと流行らないのかもしれません。また、それだけでなく、ただでさえバブルのように急増しているソーシャル・ゲームであるため、いわゆるアタリショックのようなリスク回避のために、品質維持やよりリアルな人々の生活やコミュニケーション形態に沿ったものとするための工夫や改善を常におこなってゆく必要がありそうです。

 

以前、このコラムの中でも、サービス業は「言葉や文化の壁」があってイノベーションが生まれにくいということを書きましたが、この「壁」が「障壁」となっているのか、果たして「防壁」なのか、見る立場によって異なるのかと感じます。

例えば世界経済フォーラム(ダボス会議)で、「日本の携帯電話などのIT製品・サービスは独自の進化を遂げてガラパゴス化している」と言っても、海外の経営者はほとんど理解してくれません。まず、ガラパゴス諸島について説明しないといけないほどです。

/『ソーシャル・ネット経済圏』、「日本のトップ、ネット知らず」(夏野剛氏に聞く)より

そもそも「ガラパゴス化」という言葉自体が和製英語化し、世界に通用しないという側面もあるようです。

 

昨年は「まちつく!」、「バンドやろうよ!」、「海賊クロニクル」といった人気のソーシャル・ゲームの開発で有名なウノウ株式会社が、ソーシャル・ゲーム界では世界最大のZynga Game Network Inc.に数十億円で買収されました。日本産のゲームが世界に通用しないわけではないということを証明した、日本のIT業界では大変話題になったニュースでした。つまり、「見る立場によって異なる」というのは、外国の有名ゲームの日本語化が進まずに日本が孤立化しているというよりは、「日本語が難しい」だけなのであれば、日本産のゲームが世界に進出すれば有利になることもあるのではないか?とも思えてくるということです。そういった意味で今後の動向が気になるのが、サイバーエージェント社の「Ameba Pico」(「アメーバピグ」の海外版)ですね。今度は日本のIT企業が中心となって各国のIT企業と提携を進めたり、果ては逆に買収したりして明るい未来を切り開いていってくれると良いなと単純に想像してみたりしていたいと思います。

 

cf.日本のソーシャルアプリはFacebookで成功する? Ameba Pico100万人から見えてくるもの(「TechCrunch Japan」,2010年6月17日)

http://jp.techcrunch.com/archives/20100617ameba-pico-jp-social-application/

 

昨今の一層のグローバル化の波の中で、外資系企業や輸出業に関連する企業に限らず、有名IT企業の社内英語公用語化の是非が随分と論じられてきました。当社には現状そのような制度はないですし、私自身英語ができるわけでもないので議論の場にも出れませんが(汗)、こういった制度を新規で導入することによって必然的に生じるのが「変化」かと思います。軋みを伴うものかもしれませんが、少なからず「変化」が生じ、そこから何か新しいものが生まれてくる(イノベーション)ようなイメージはあります。会社で制度化することによって、どの価値観が優先されているのかという意思表示にもなり、スピード感がもたらされる印象も受けます。確かに婉曲表現に使うための横文字・カタカナ文字(和製英語)や、氾濫する新書の書籍タイトルなどでやはり氾濫する造語で足りない頭を満たすくらいなら、異文化コミュニケーションのための正確な言語を学びたいという気持ちはあります。社内英語公用語化の是非を語る上では置かれている立場や求められる業績、目的など比較対象になるものが必要ということですね。

 

このことは人が「必要」に迫られないとやる気にならないのと似ていて、企業もまた、「必要」に迫られないとやろうとしないでしょうし、そうした「壁」に直面していない外部の人にとっては中の人以上に置かれた状況を知ることはできないものなのではないかと想像します。もしかしたら、選択肢としてより最良のものがあるかもしれませんが、そもそも「最良の選択」は人によって違う筈で結局は「自分の意見+世の中のいろいろな最良な意見」の中から選択する必要が出てきます。基本的に情報の発信者は自身の意見が正しいと思って情報発信すると思うので、意見が割れた段階で人によって「正しい意見が異なる」ことが証明されます。また、通常の考え方として今まで継続的に成果をあげてきた人が、ある日突然、声を荒げて警鐘を鳴らす程の致命的なミスジャッジをすることは考えにくいし、重要なのは常に改善を繰り返し、より良い状態に昇華していけるリーダーの強い意志と習慣、そして、リーダーの思いの本質を理解して支持をした中の人とステークホルダーの強いコミットメントと行動、もたらした結果とであって、外部の評論家がその一部を担うことはあっても、決定付けた歴史はあまり見られないことは過去に何度も証明されてきたことだとは感じます。

まさに「世界とつながって仕事をする時代」。これは事業機会のグローバルな広がりと同時に、企業がかつてなく激しい国際競争の渦中に投げ込まれたことをも意味している。

/『実践ダイバーシティマネジメント 何をめざし、何をすべきか』(株式会社リクルート HCソリューショングループ編著)

近年、日本の文化は、元来内向きなところがあるとよく言われてきました。

1982年に日本で刊行された李御寧(リー・オリョン)氏の『「縮み」志向の日本人』の中では、石川啄木の「東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる」や「春の雪銀座の裏の三階の煉瓦造にやはらかに降る」の短歌が挙げられ、「の」が3度も重ねられて小局へとズームイン、フォーカスされていくような描写――、「世界を縮めようとする」「入れ子型」の感覚に「縮み志向」を読み取っています。

 

「平成の開国」期、製造業などの世界進出(日本脱出?)はよく聞かれるニュースですが、2011年以降のデジタルマーケティングの潮流を推測しながら、昨今のグローバル化でサービス業のイノベーションも問われるか?といったところも、最新ニュースの観点の一つとなってきそうです。

 

映画『ソーシャル・ネットワーク』の内容とはまったく関係のない話になりましたが、私はこの映画を見て、以上のような思いが巡りました。

 

今後、Web業界だけに留まらず、より一層進んでくる「ソーシャル化」の波の中で、2011年以降の日本の市場は、また企業内でも同様ですが、出る杭を打つかのように互いに潰し合ったり足を引っ張り合ったりする競争ではなくて、互いの強みや業績を応援し合うような競争が今まで以上に求められてきているのだと感じます。

 

当社も今年8月で、設立10周年を迎えます。今年2011年は、企業理念にも掲げられた「共存共栄」の精神をもっと磨き上げて、より大きな価値を生み出し、跳ねる年としていきたいと思います。今後とも引き続きどうぞ宜しくお願い致します。