不況期の「Web戦略アウトソーシング」のすすめ ~「SoftBank Days 2010~iPadが変えるワークスタイル~」等の外部セミナーを聴講して~

投稿者:小川 悟

2010/10/23 17:51

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日本企業というのはどんどん海外進出しています。それは、安い労働力で安く作らないと負けるから海外に進出しているわけです。私に言わせれば、そうではない。安く作らないと売れないというのはアイディアの不足なんです。だから、日本国内で作っても高く売れるだけのアイディアを考えたらいいじゃないかというのが私の意見です。それは決して難しいことをしなくても、実に他愛もないことで実現できるのです。

/『ゲームの父・横井軍平伝 任天堂のDNAを創造した男』 (牧野武文著)

『不況期の「Web戦略アウトソーシング」のすすめ』と題しましたが、「情報革命」が起きている現在、Web戦略にはどの企業様も注力されていることと思いますが、当社のメインのお客様層である中小・ベンチャー企業様に至っては、このような不況期に新規でWeb担当者一人を専属で雇用し、成果を上げるまで教育してゆくといったことが困難であるという企業様も多くあるかもしれません。当社は、そのような場合にも、是非一度ご相談頂きたいと考えている企業です。

 

今回のコラムでは、今月私が参加した2つのセミナーを通じて得た感想を交えながら、これをお読み頂いている中小・ベンチャー企業の経営者様やWeb担当者様に、「このような不況期だが、最近手を入れていない自社公式サイトを見直したい」、「勝負に出たい事業があり、専用のサイトを立ち上げて新たな市場を獲得していきたい」といったニーズにお応えする「Web戦略アウトソーシング」をご活用頂くメリットをお伝えできればと考えております。

 

1つ目のセミナーは、「MCMフォーラム2010」(トランスコスモス株式会社主催)というもので、知人よりお誘いを受け、参加致しました。

基調講演として、株式会社セブン銀行代表取締役会長、安斎隆氏による「方向感なき世界経済」と題し、世界の経済情勢をはじめ、マクロ環境の説明を中心にお話されていました。

その後は、トランスコスモス社の提供する「戦略的アウトソーシング」の紹介がありました。基調講演のメインテーマを受けて、マクロ環境の説明から入り、市場からの戦略的アウトソーシング活用による売上拡大・コスト削減のニーズが高まってきているという前提の説明がありました。

ところで、トランスコスモス社と言えば、当社と関連したところで言えば、まずイメージするのが「日本最大級のWebインテグレーター」ということでしょう。当社とはもちろんターゲットとしている層も違えば、扱っている分野も多岐に渡られますが、殊「Webインテグレーション」の市場シェアだけで言えば、日本一の売上高を誇る企業です。私たちも、中小・ベンチャー企業向けWebコンサルティングの市場ではNo.1を目指して企業努力を続けてきているので、参考にできる部分はしたいと感じながら聴講しておりました。

説明の途中で、お客様企業の動向として「今後5年間に重視する取組み」というものがありました。そこでは、「顧客により近づく」、「人材・スキルの向上」、「情報分析力の向上」といったものが掲げられていましたが、ターゲットとするお客様層や扱う商品や規模は違えども、「戦略的アウトソーシング」の観点で言えば当社でも今でも必要とされてくる要素ですので、今後もより強めていきたいと感じました。

 

また、トランスコスモス社は、 ヤフーが提携した中国のEC市場4億2000万人(普及率約35%)のシェア8割を有するとも言われる巨大ECモール、「淘宝網(タオバオ)」と日本で唯一の戦略的BPO(Business Process Outsourcing)を組んだことでも知られています(コールセンター業務をはじめとしたCRM関連業務全般を提供)。

先日は、楽天が百度(バイドゥ)との合弁で「楽酷天(らくてん)」をオープンするなど、昨今だけで言っても尖閣問題をはじめとした種々のチャイナリスクを承知の上で、EC/ポータルサイト運営の2大企業はリスクを取って中国に進出を果たしました。

 

昨日帝国データバンクが発表した内容では、帝国データバンクのデータベースに登録されている企業だけでも、既に日本から1万社以上の企業が中国へ進出済みであると言います。また、今年2010年、中国のEC市場は4兆元(約48兆円)を超えるとも試算されています。リスクを取ってでも進出するということは、それだけ魅力があるか、現況に危機感を感じているかが考えられるでしょう。私たちに分かることとしては、それを何かしらのシグナルと感じることくらいであるかもしれませんが、新たに市場を開拓するパイオニア企業があって形成される市場もあるわけですから、動向だけは興味を持ってチェックするのも仕事の内であると感じました。

 

余談となりますが、ビジネス用語に「Comfort Zone(快適ゾーン)」と呼ばれるものがあります。個人でも自分の担当する業務に慣れてくると、常に確実に仕事をやり遂げられる分、外部からの評価が高かったり、自身でも楽しかったりするので、そのまま新しいことにチャレンジせず、今以上に職域・職責を拡げたりしない状態に陥ることがあります。その居心地の良い安住なポジションをそのように呼びます。多くのケースでそのまま放置していると成長が止まると言われています。ヤフーや楽天も、今のままでも日本の市場はほぼ独占していたわけですから、あえてここまでリスクを取らなくても、と感じる疑問に対するヒントがここにあるのかもしれません。

 

さて、当社でも、日本国内でECサイトをお持ちのお客様を対象に、リスティング広告の出稿・運用をお手伝いさせて頂いております。

ECサイト運営は、本腰を入れてやろうとすると、結構なリソースを必要とするものです。その際、リスティング広告を併用してうまくいっている中小・ベンチャー企業様も多くいらっしゃると思うのですが、当社でもそのような事例を自社主催セミナーでご紹介させて頂いたり、以下のようなソリューションを提供することで、お客様の課題解決をさせて頂いております。

 

■ネットショップ集客専門 リスティング広告代行サービス Freesale EC

http://www.freesale-ec.com/

 

「元々自社で運用していたが、業務拡大、もしくはコスト削減を期待して、本業に選択と集中をするため、インターネット広告全般は外部へ委託することにした」といったお客様にも多くご利用頂いていますので、ご興味をお持ち頂きましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

 

さて、2つ目のセミナーですが、大変多くの方が来場されていたので、これをお読みの方の中にも行かれた方が多くいらっしゃるかもしれませんが、「SoftBank Days 2010~iPadが変えるワークスタイル~」(ソフトバンクモバイル株式会社)を聴講して参りました。私が聴いた孫正義氏の講演の動画やプレゼンテーション資料はこちらから視聴できます。

 

やはりこのセミナーでも、孫氏による「情報革命」の概要や、マクロ環境の説明からスタートしました(cf.『インターネット全盛の時代にこそ『孫子の兵法』を ~ソフトバンクアカデミア開校、「ソフトバンク 新30年ビジョン」を視聴して感じたこと~』)。

 

「『失われた20年』を取り戻すために、これ以上迷っている場合ではない!」

と檀上の孫氏は語調を強めて話されました。

 

折しも14日の日経新聞朝刊トップに、若年層収入で男女の手取り収入が逆転した旨の記事が踊りました。パッと見、大変インパクトのある見出しでした。内容を抄出すれば、男性が多い製造業で落ち込んだのに対し、女性の多い医療・介護系サービスの需要が伸びたためとあります。

以前、このコラム(cf.『名古屋営業所開設に想う ~ものづくり大国”NIPPON”ブランドを牽引する企業にあやかりたい~』)でも書いたことがありましたが、私の父が町工場を営んでいたことから、私が中学時代(80年代後半)より「産業の空洞化」という言葉をよく耳にしていました。私には「継ぐ気はない」としながら、大学に進学した後、父の会社のお取引先様の工場が中国にあるので見て来いと言い、私は生まれて初めて行く中国でしたが、なぜか父の仕事関係者(同じ地域にある他の町工場の社長や会計事務所の方々)の中に一人混じっての、半分仕事であるかのように工場視察、及びレポート執筆のための訪中となったのでした。

今から20年前、先に書いたように中国などに仕事が流れたりしたことで、町工場におけるそれまでのバブルな受注体制(製造過程で出る鉄くずでさえ収益源になったと言っていました)が一気に収縮してくる時代を迎えることになります。下請けであった父の工場に流れてくる仕事の単価はどんどん下がり、延命措置で採算割れ覚悟で受託するのか、それとも断るのか、生殺与奪の権利を親会社などに握られてしまっている状態になった様子を私も目の当たりにしていた筈でした(もちろんすべての町工場がこのような状態であるわけではありません)。こうした時期を過ごし、いつかは製造原価的にも世界競争力を失ってゆくことは、父に未来予測をする能力があったというよりも、その仕事に携わっている人であれば誰もが予測できたことなのかと今になって想像します。

 

周知のように、今年日本はGDPで中国に抜かれ、先日は、工業製造分野においても中国が日本を抜いて世界第2位の工業製造国となったという旨の記事が出ました。このこと自体は先にも書きましたが不思議はありません。60年代~80年代の日本は「東洋の奇跡」と欧米諸国から言われるくらいに製造業で世界をリードして高度経済成長期を支えた過去がありますが、その後、物質的豊かさを手に入れるのと同時に賃金ベースでも、全世界的に製造の主体は中国などに移り、今度は中国が「世界の工場」化していった背景があります。今後の予測では、8年後には中国のGDPは日本の倍になるとも言われているそうです。ですから、ここでベンチマークすべきなのは、”対中国に対する”日本のGDPの水準ではなく、別のところにあるのではないかとも思えました。

 

孫氏は講演の中で、幾つかの指標を話されました。まず、国の国際競争力として、日本は1992年には世界1位であったのに対し、現在は27位になっていること。日経平均株価が1989年当時は38,915円であったのに対し、2010年10月18日時点では9,490円になっていること。労働生産性は、G7の中で15年連続最下位であること。その他、発表はありませんでしたが、他にも負の要素は探せばあるかもしれません、例えばGDPに占める教育費の割合も、主要先進国の中でほぼ最下位レベルとなっています。

今後、少子高齢化が本格的に進んでくる日本として各種法令や制度の整備はもちろんですが、若年層の需要がある海外へ視野を向ける企業が増えてもおかしくはないのかもしれないと感じました。人口ピラミッド(cf.「International Data Base Entry  – U.S. Census Bureau」)を参考にすると、今後10年、20年の単位で少子高齢化を迎えるのは、日本だけでないことが分かります。先の中国だって、数年前の一人っ子政策の影響もあってか、10年~20年後には、日本と同じような人口分布になってくることが分かっています。現時点での数値や、事象だけを断片的に評価して、一喜一憂している場合ではないのは皆同じですね。 

 

先述した安斎会長の講演でも、別紙配布されたレジュメの最後には、「日本の生きる道は課題先進国から課題克服先進国へ」と書かれてありましたが、課題を克服するためには、小さな枠の中だけで慎重になり過ぎて、ああでもないこうでもないと逡巡しているだけではダメで、とにかくリスクを取って今すぐ行動すべきであるというようなことをおっしゃっていたので、結び付いてきます。

孫氏のセミナーでは、そのようなマクロ環境の中、多くの企業が抱える悩みは、「売上」、「生産性」、「コスト」であるとおっしゃっていました。そしてその課題解決の救世主が「iPad+クラウドサービス」であると説いています。その2つを活用することで営業の生産性(=情報の生産性)に繋がる、そうしたビジネススタイルを「ホワイトワークスタイル」と呼ぶ、と。事実、ソフトバンクテレコム社では、従業員3,000人が使用していたノートPCを捨て、全員にiPhone&iPadを支給したとのことでした。そのコンセプトをベースに、導入企業様数社が事例を発表されていました。 

 

以上、2つのセミナーを聴講し、改めて今のような時代は今までのやり方のままでは通用しないことを実感しました。「売上」、「生産性」、「コスト」に至っては、今に始まった企業の課題ではありませんが、好況のときのそれと世界的不況のときのそれとではやり方は変わってくるでしょうし、今の市場、今の自社、今のパートナー企業、今の技術、今のスタッフで選択可能な選択肢は変わってくる筈です。

私たちの提供する、中小・ベンチャー企業向けWebコンサルティングをご導入頂き、本業と切り分けながら「うまくご利用頂く」ことで不況の波を渡っていく、そういったイメージを深め、実現できるような体制づくりに今後も注力していきたいと思います。

 

最後になりますが、セミナー関連の話題からの流れで、今月初頭、現在当社が利用中のプレスリリース配信代行サービスを提供されているPDBマーケティング株式会社様から取材を受けた御礼を兼ねて、この場でご報告したいと思います。

「セミナー運営の一石三鳥の秘密」というタイトルでメールマガジンで配信されたのですが、バックナンバーとしてこちらのページ(cf.「セミナー運営の一石三鳥の秘密【PDBM Daily News 2010/10/05】」)に掲出して頂いています。

 

昨今当社では、中小・ベンチャー企業向けWebコンサルティングを5年ほど提供し続けてきた経験も踏まえ、Webマーケティングに関するセミナーを月1~2回のペースで開催するようになりましたが、ちょうどその模様を取材頂いたものでした。セミナー運営の何が一石三鳥なのかと言えば、記事から一部抜粋させて頂きますと以下のようになります。

1、定期的な発信から、
2、社員育成、
3、顧客とのコミュニケーションポイントの創出、

よくよく考えてみると当たり前のことなのかもしれませんが、セミナー実施前のマインドセットで、吸収できるものもだいぶ変わってきます。 既に出古したと思われがちな手法であっても、時宜を得て目的を明確にし、創意工夫をもって行うことで、得られる効果を倍増させることが可能になると実感しました。

当社の開催する各種セミナーにつきましては、「Webコンサルタント.jp」のTOPページにて常時ご案内しておりますので、よろしければご参加頂ければと思います。