「将に将たる器」を有した人財育成・輩出装置としての社員総会 ~自身の殻を破るための”秘密の鍵”を探すトポスとしてリフレーミングする~

投稿者:小川 悟

2010/07/04 23:24

この記事は約8分で読むことができます。

たとえば、商品やサービスの需要が減って売上が落ちてしまうと、何をしてもムダというあきらめムードが社内に漂います。せっかく提案された新しい商品企画や販売手法に対しても、初めから無理な理由やできない言い訳を探すように探すようになります。心理学で「学習性無力感」といいますが、無力感には蔓延作用があるのが厄介です。無力感が蔓延しているような組織に成長は望めません。

/『ヒットを生み出す最強チーム術 キリンビール・マーケティング部の挑戦』(佐藤章著)

昨日、3日は前回に引き続き四半期に一度の社員総会がありました。各拠点から同僚たちが集まり、いつもどおり各部門方針の進捗を共有したり、昇格者や表彰対象者を祝い合ったり、懇親会でお酒を交わしながらコミュニケーションを深めたりしていました。

 

■(写真)第二四半期社員総会・第二部懇親会の一幕

_MG_7595_2.jpg

 

私が見ているCS部門の一部のメンバー間では、年齢も近いせいか、普通の会社に比べると普段からお酒を交わす頻度が異様に高いと思います。昔ながらの「飲みニケーション」の文化が自然と根付いているのかもしれません(もちろん200人規模の会社なので全員が全員そうであるというわけではありませんが)。

 

先月もワールドカップで日本代表を応援するために、カメルーン戦は仕事帰りに恵比寿にある某レストランに行って大型スクリーンを見ながら盛り上がり、デンマーク戦のときは会社からタクシーで1メーター程の場所にある居酒屋の個室を半貸し切り状態で大型テレビを見ながら観戦していました。

スポーツや戦争はよく仕事にも置き換えて言われることがありますが、今回のワールドカップや社員総会を通じて同僚とお酒を交わす中で諸々考えたことなどをお話できればと思います。

 

それまで敗戦が続いた岡田監督や日本代表へ対する期待度・支持率が、その後勝ち進むに連れて急激に回復してくる世論の統計を何かの記事で見ながら、「やはり世の中、そういうものか……」と、つられて改めて身が引き締まる思いになったものでしたが、ちょうどそのように考えていた頃、CS本部の松谷が「お取引先様から教えてもらった記事ですが」と共有してくれた記事に今さらながら目を通し、共感する部分が多かったのでご紹介したいと思います。

 

cf.岡田武史氏が語る、日本代表監督の仕事とは(「Business Media 誠」,2009年12月14日)

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0912/14/news010.html

 

この記事の中で岡田監督が、「指導者としての自分の限界を破りたい」 と思い立ち、「秘密の鍵」を探し求めるくだりがあります。この感覚は、仕事を長くしていると私たちも深く考える局面に立たされることがよくあると思います。私の場合は、月並みですが、上司や同僚とのコミュニケーション、外部セミナー、読書といった狭い枠だけかもしれませんが、こういった中から何か一つでも得られることはないのかと探し求めることがよくありました。

 

ちょうど7月から新たな職責に就くにあたり、当社社長から『社長が押さえておくべき30の基礎科目 経営の教科書』(新将命著)という本を贈られ、もう一段上の視点を期待されることがありました。少なくとも社員総会までには読んでおこうと思い読了していたのですが、諸々の思いが去来する中、神妙な面持ちで今回の社員総会に臨んでいたものですので、最初は同僚から「なんか今日は元気ないですね」と言われてしまいました。元気ないということはなかったのですが、さすが自部署のスタッフはよく見てるな、と思ってしまいました(笑)。

この本の中には、会社経営というだけでなく、「自部署の運営」という経営に準ずる組織運営に関する重要なエッセンスが多く詰まっていました。少し触れるだけでも、大局観を身につける方法として「修羅場をくぐる」であるとか、他責にせず自責でなければならないであるとか、他に常勝企業ジョンソン・エンド・ジョンソン会長のスピーチにあったという「何かをやっていい結果を出したいと思うなら、物事はすべからく”FUN”でなければならない」といったくだりがあり、この辺の内容は先述の岡田監督の記事にも通ずるものがあります。つまり、こうした考え方は「マネジメント(経営)」の原理原則だと言えるでしょう。

 

原理原則ということで言えば、「こうやればうまくいく」、「こうやるとうまくいかない」という、言わば「秘密の鍵」のようでもありますが、もちろんビジネスの世界はそんなに単純ではありません。だからこそ既知の、誰がどう考えても誤った考え方は廃していきたいものです。

冒頭で引用したエピグラムは、麒麟麦酒営業本部マーケティング部部長の佐藤章氏が、「カマス理論」について触れたくだりです。

氏はキリンビバレッジの商品企画部に出向したり、「FIRE」や「生茶」のブランドを大成功させた方として有名です。

cf.商品企画部長・佐藤 章(2006年4月20日放送)/「 NHK プロフェッショナル 仕事の流儀」

http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/060420/ 

 

この「カマス理論」については、以前にCS本部の松谷もコラムで触れましたが、これも原理原則の一つと言えるかもしれません。

簡単に言えば、カマスとは気性の荒い魚ですが、当然、水槽の中にエサとなる小魚を入れれば瞬く間に食べてしまいます。そこにエサとカマスとの間に透明なガラスの間仕切りをするのです。そうすると最初の内はエサを食べようとガラス板にぶつかっていきますが、食べられないことが分かるとガラス板に当たらなくなります。また、間仕切りを外してもエサを食べにいかなくなったというものです。

面白いのはここからで、それではどうやってこのカマスに再びエサを食べさせるようにするか?という方法なのですが、 意外と簡単で、水槽の外から新たなカマスを入れるだけで良いというものです。新たに水槽に入れられたカマスは真っ先にエサに飛びつきますが、それを見た他のカマスも一斉に飛びついていくようになるという理論です。

この話を先の松谷はよく、新卒入社者や中途入社者のオリエンテーションで話をするといいます。外部から当社に入社してくるスタッフたちには、新たに投入されたカマスのような期待を込めて迎えるようにしています。 当社が「チェンジ」できるタイミングは有効活用したいものです。

 

以上のように、組織全体がこのような「学習性無力感」の状態になってしまったら大問題ですね。しかし、「どうやって勝つか?」と議論している場で、「ホントに勝てるのかなぁ?」というムードが漂うことなどあるのか?と思ってしまいますが、こうした本を読んでいると意外に多くあるもののようです。

私はこのように既知の、知っている人なら誰しもが知っているというNGの法則――、既にダメだと考えられている原理原則を知らずにそのまま典型的な事例のように陥っていってしまうことが非常に嫌いです。未知なことにチャレンジして失敗してしまうならまだしも、最初からダメになると分かっているのに誰も変えようとせずに全体的にダメになっていってしまうプロセスを看過するほど良くないことはないと思います。

社員総会では全スタッフが一堂に会すので、こうした不況期にあってもポジティブな発想を持った人も多くいて、大変刺激になります。次世代リーダーが多く輩出されてくるようになったのも、こうした社員総会があったことも一つの要素としてあったかと思います。

自部署のスタッフを育成し、優秀なスタッフを輩出し、組織を活性化させてゆくような、「将に将たる器」を持った人財が今後もより多く輩出されるような「場(トポス)」にしていければと考えています。

 

最後に、以前も「諸子百家」や、「三国志」、「項羽と劉邦」等の中国古典についてコラムで触れたことがありましたが、今回も「項羽と劉邦」の逸話で締めたいと思います。

「陛下ハ兵ニ将タルコトヲ能ワズ、而して能ク将ニ将タリ。コレスナワチ信ノ陛下ノタメニ禽(トリコ)ニセラルル所以ナリ」

※「陛下は、兵に将たる力はありませんが、将に将たる力をおもちです。わたしが捕らえられたのは、そのためです」

/『中国古典に学ぶ 人を惹きつけるリーダーの条件』(守屋洋著)

これは、「項羽と劉邦」の戦いにおいて、劉邦が項羽を破った後のエピソードです。劉邦の配下には優秀な人財が多くいたとのことですが、その内の一人である韓信に対して劉邦が話掛けた際のものと言われています。

著者の守屋氏はこの韓信を、ビジネスの世界に置き換えると「営業担当重役」としています。韓信は劉邦と違って多くの兵を率いる力があると主張し、劉邦がそれではなぜ自分の配下に下ったのか?と聞き返した際に韓信が述べたとされています。

もちろん当社では、「兵に将たる力」をつけ、「将に将たる力」を持った人財をより多く輩出していきたいと欲張って考えていますが、この社員総会がその加速装置として機能するようにしていければと考えています。

 

皆様の会社では、このように自社が置かれた状況という殻を破るための仕掛けはご用意されていますか?

私たちはこれからももっと実力をつけ、実績を発揮して、先の外部のカマスのように中小・ベンチャー企業様のWeb戦略に食い込んで、マンネリ化したムードを吹き飛ばせるようになりたいと考えています。

今後も多くの企業様にお会いしてゆくことになると思いますが、自社スタッフの底上げも使命の一つとして強く推進していきたいと思います。