“日本資本主義の父”渋沢栄一生誕170年、「リーダー」とは何かを改めて考えた ~道徳も経済も同時に学べるOJT/OffJTで次世代リーダーを輩出する期へ~

投稿者:小川 悟

2010/06/20 13:54

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政治の世界で、今日、物事が滞ってしまっているのは、決めごとが多すぎるからである。官僚たちも形式的で、たとえば物事の本質を考えようとはせず、自分にあてがわれた仕事を機械的に処理することで満足してしまっている。いや官僚ばかりではない、民間の会社や銀行にも、このような風潮が吹き荒れているように感じられるのだ。もともと形式に流されるような風潮は、発展中の元気溌剌な国には少ないものだ。逆に、長い間の慣習が染みついた古い国には多くなる。徳川幕府が倒れたのはこの理由からでもあった。中国には「戦国時代にあった六つの国は、秦に滅ぼされたのではない、自ら滅びる原因を作って滅びたのだ」という言葉もある。

/『現代語訳 論語と算盤』(渋沢栄一著,守屋淳訳)

 こんにちは、小川です。

さて、前回コラムを書いてから1カ月半。この間にも首相が交代したり、上海万博やワールドカップが始まったり、世の中では大きなイベントが多い時期でしたが、当社でも、この「Webコンサルタント.jp」自体をリニューアルしたり、「歯科タウン」をリニューアルしたり、「Web&モバイル マーケティング EXPO (Web-Mo) 」という展示会にブース出展したり(当社出展は今年で3度目)、大変忙しい時期でもありました。

 

これだけ慌ただしい世の中であっても、まだテレビや新聞、インターネット上のニュース記事では不況だ、企業の不正だ、犯罪だと暗いニュースは絶えません。「コンプライアンス不況」「官製不況」といった言葉がありますが、まさに言い得て妙で、世の中が不況で苦しくなり、苦しいがために倫理観を欠いてしまった企業が不正をしたり、その監督責任を追及された行政が規制を厳しくすることによって、今まで何とかやってきた企業が規制強化の煽りを受けて生産性や柔軟性が減退して苦しくなりといったように悪いスパイラルが起こっているような側面もあるのではないかと感じました。

 

■コンプライアンス標語コンテストの結果発表 - コンプライアンス意識向上に役立つ標語は? | ハイテクノロジー・コミュニケーションズ株式会社(2010年06月11日

http://release.vfactory.jp/release/38314.html

 

先日も上記のようなニュースリリースがあり、昨今の企業の不祥事と照らしても、うまく言い当てたような標語が多く掲載されていて、当社でも月に1度、法務担当の者が中心となって全社員に向けてコンプライアンス研修を行っていることもあって、改めて意識を高めたいと感じたところでした。

 

私たちがWebコンサルティングを主に提供している中小・ベンチャー企業という市場は、日本にある421万企業の内、99.7%を占めると言われていますが、行政など上位方針に動きがあると、その影響はちょうど水面を打つ波紋のように緩やかに広がり、やがて一番外側の方になると大きな影響を受けていたりといったことがままあります。それでも振り回されないように必死になって企業努力をしている会社は多いと思います。たった一人の心ない人によって所属する集団が不幸になるように、たった一社の独善的な利潤追求の心が日本経済に影響を及ぼすかのようです。

 

・中小企業庁:中小企業・小規模企業者数
http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/chu_placement/

・コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(帝国データバンク,2010年5月13日)

http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p100502.html

・零細企業の倒産動向調査(帝国データバンク,2010年6月16日)

http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p100603.html

※2010年6月18日、「改正貸金業法」完全施行

 

当社のようにWebコンサルティングという比較的歴史の浅い業界で、どちらかと言うと自由なイメージがある業界であっても、そういった動きに全く影響を受けないかと言えばそうでもありません。

昨年9月の消費者庁が発足し、かねてより進めていた消費者庁設置関連法の主管が次々と消費者庁に集約されていきました。

 

cf.【改正景品表示法】9月の消費者庁発足の影響は?IT&広告関連法規もまとめて所管へ(「Webコンサルタント.jp」,松岡 雄司)
http://www.web-consultants.jp/column/matsuoka/2009/09/9it.html

 

また、私たちも賛助会員として名を連ねることとなったeビジネス推進連合会発足の元となったのも、昨年6月1日施行の改正薬事法の影響による医薬品のネット販売規制に端を発した要素も多分にあるでしょう。

 

cf.改正薬事法の波紋、通信販売「禁止」の規制に非難が集中(「東洋経済オンライン」,2009年6月8日)

http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/5470d8890a1ccd667bbb65ad8d066bc2/

 

弊社が抱える4000社のお客様の内の数社もこれら改正薬事法や改正特商法の影響を受け、下げなくてはならないコンテンツを含んでいたり、表現を追記・訂正する必要性のあるWebサイトがあり、関連するお客様へ連絡を取りながら一緒になってWebサイトの修正をおこなったことなどが思い出されます。

大きな会社と違って社内に法令に詳しい専門家がいるということはまずなく、経営者の方やWeb担当者の方から、「ちょっと聞いたんだけど、どこをどう直せばいいですか?」といったご質問が電話やメールで届いたりするのです。こう書くと「企業として当たり前ではないか」とか、「規制を整備することがなぜダメなのか?」と言われるかもしれませんが、そういうことを主張したいのではなく、限られた土地の中で皆が生活しているわけなので、ゼロサムゲームの如く誰かが得をすれば誰かが損をするルールなんて世の中いっぱいあると思うのですが、市場の裾野の方でこのような影響を受けている企業や人がいることも意識した見地で、やり方や発言内容もそれなりのことができるのではないかと感じたわけです。

 

ここで少し余談となりますが、4月に花見に行ったときのことについて触れたいと思います。桜は日本の国花ですが、毎年春先になると、日本全国の花見スポットに多くの人が集まり賑わいます。私もその賑わう雰囲気が好きで、開花と会社の休みがうまく合えば出向きたいと常々思っていたところ、今年の春はばっちり休みとかぶったので、飛鳥山公園まで同僚を誘って行って参りました。大学時代のゼミの先生が桜について著しており(cf.『桜の文学史』/小川和佑著)、授業中によく桜と文学の話をしてくれていたことを思い出しながら、一人詩情に浸ってみるのもまた非日常を感じられてストレス解消の一環としても良かったりしています。

 

この飛鳥山公園は、今から300年近く前に、当時強烈なリーダーシップを発揮して、江戸時代の三大改革の一つである享保の改革を推進した8代将軍徳川吉宗が切り開いた桜の名所として名高い場所ですが、ここにはもう一人、やはり強烈なリーダーシップを発揮して維新の時代を生き抜き、公のために生涯を貫いた人物に関する有名な記念館があります。それがコラムのタイトルや冒頭の引用部でもご紹介した渋沢栄一翁です。

渋沢栄一については、以前、CS本部の吉田もコラムで触れ(cf.『『信用は実に資本であって、商売繁盛の根底である』渋沢栄一』)、私も大河ドラマ『龍馬伝』について触れたコラムの中でも少し書きましたが、同僚と飛鳥山公園に行こうとなった際、敷地内にある渋沢記念館は絶対に見に行こう!と言っておりました。どちらかと言うと、花見よりもそちらが主目的になっていたような感じでしたが。

 

cf.2010年、フリーセル創業10年目という節目、お客様に感謝の気持ちと原点回帰の想い ~大河ドラマ『龍馬伝』を見て感じたことなど~

http://www.web-consultants.jp/column/ogawa/2010/01/post-46.html

・江戸東京博物館:2010年NHK大河ドラマ 特別展「龍馬伝」

http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/page/2010/0427/0427.html

 

今期(2010年4月~)に入り、全社経営テーマに「全員プロフェッショナル」が掲げられ、その中の重点テーマに「学習する組織づくり」「人財育成」が掲げられたこともあって、当社としても新たなステージである第10期目に突入するプレッシャーの中で、先人たちの歩んだ道を俯瞰できる場所を思案していたとき、ちょうど生誕170年に当たる年でもあるし、 『龍馬伝』を見て思い出したこともあって、この渋沢記念館を訪ねたい衝動に駆られました。

 

■館内のミュージアムで販売されているクリアファイル、渋沢栄一の唱えた

「道徳経済合一説」に因んだ言葉がデザインにあしらわれている。 

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世の中にはいろんな考え方や思想があり、ビジネスの世界においてもどれが正しいという戦略というのはなかなか分からず試行錯誤するものではありますが、これらの渋沢栄一の遺された言葉は、物事の本質を言っているような気がして、まさに言霊とも言うべきか、自分の考え方にすぅっとインプットされる感じがして、こういった時期に記念館を訪れるのは大変刺激になりました。

渋沢栄一についてはここでは書ききれないため割愛しますが、10代の頃は尊皇攘夷の思想に傾倒し、北辰一刀流の千葉道場にて剣術を学んでいましたが、その後一転して一橋慶喜(徳川慶喜)に仕え幕臣となり、パリ遊学中に大政奉還を迎え、フランスから持ち帰った株式会社制度を推進し、多業種500社の株式会社の設立に関わってゆくことになります。飛鳥山公園の敷地内にある「紙の博物館」には、現在の王子製紙王子工場の前身である抄紙会社(1873年設立)の資料をベースにもしていますが、この抄紙会社の設立にも渋沢栄一が絡んでいます。

 

このようにして、維新後、近代に向けて発展しようとしながらも、制度もしっかりと整っていなかった時代に、公益のために必要と感じたものを次々と生み出していった推進力は、今のような時代に必要なリーダーシップではないかと感じました。

当社には、「コンセプトブック」と呼ばれる、企業理念や大切にしているキーワードがいつでも参照できるような小冊子が社員一人ひとりに配布されているのですが、その中から一部抜粋させて頂こうと思います。

 

「リーダーの3つの条件」

1. 目的地を創れる

2. 目的地に皆を行きたくさせられる

3. 情熱と執念を持ち、最後まで諦めずに目的地を目指すことができる

 

といったものです。

簡単に書かれていますが、抱える組織の規模の大小こそあれ、「リーダー」と呼ばれるタイプの人はこうしたコンピテンシーを発揮している人が多いのではないでしょうか。

 

■人事の5割強、リーダーシップ開発の鍵は「就職氷河期世代」と回答(アルー株式会社調査「“ゆとり”“氷河期”の世代傾向から見る人材育成のこれから」発表)

http://release.vfactory.jp/release/38401.html

 

そのような気持ちのまま、ネット上のリリースに目を通していたら、上記のようなものも発見しました。今のような時期は、どこの会社でも「人財教育」に力を入れているのだなと強く納得しました。

 

当社でも先週だけで外部講師を3組もお招きし、社内スタッフ向けに研修を行って頂きましたし、それ以外にも、先述の「フリーセル大学」や「部課長塾」といった社内教育制度によって専門能力について学び合う、気付き合う場を作っています。多くの人はきっと、強い使命感や不足感を感じないと、自分事のように頑張れる人は少ないのだと個人的には思います。であれば、そうした機会を多く作り、気付きの機会を意図的に増やすことで、成長スピードや角度が上がるのではないかと感じています。当社にはこのように、OJT(On the Job Training)やOffJT(Off the Job Training)の仕組みがあります。この「フリーセル大学」や「部課長塾」のカリキュラムは、各実行責任者が社内のグループウェアに入れてスケジュールやテキストを共有するのですが、IT勉強会カレンダーのように全員が一覧を参照でき、必要に応じて参加することができます。しかし、こういった制度も最初から当社にあったものではありません。創業期などは正直後回しにされていた制度だったかと思います。優先順位の面でようやく実行できるようなフェーズになり、本当に必要を求められるようになった今だからこそ出来ていることを感謝しなければならないと考えています。

 

先に例で挙げたように、属している集団が目的や方向性を見失い、一人ひとりの心に迷いが生じてあらぬ方向に歩み出してしまうことがあるとすれば、その集団に真のリーダーが不在なのかもしれません。逆に「その集団と共に絶対に目的地に到着する!」という強い信念を抱き続けることで正しい方向に導くことができるのであれば、先に気付きを得た人から順に強いリーダーシップを持って後進のスタッフやお客様を牽引していかなくてはならないと感じました。

 

来月は当社は第二四半期に突入し社員総会なども控えていますが、その場は全社員が一堂に集まり、改めて当社や自部署の目的地を再度共有し、同じ温度感で認識し合う場でもあります。一人だけでは辿りつけないような場所でも、皆で協力することで行けることがあります。是非次月はそういった感覚を感じていたいと思います。