小川 悟(取締役CS本部長)
もし、幸運にも、あなたの組織で語り継がれている物語があったなら。
あなたも、それを、語り継いでください。(中略)
そして、人の物語を真剣に聞いた別の人が、こう語り始める様子を、何度も目にしています。
「そういえば、私にも、こんな物語があった」
物語は、物語を誘発し、人と理念、人と人とをつなげていきます。
/『感じるマネジメント』(リクルート HCソリューショングループ編)
先週は管理者向けの合宿研修がありました。合宿形式で研修が行われたのは、昨年に続いて2度目となります。合宿形式の研修のメリットの一つは「環境」にあると思っています。同じ話を聞くのでも、いつもの職場で聴くよりも集中して聴けますし、自分から話をする機会は多く与えられますし、普段よりも開放的になって話をする内に今まで気が付かなかったことに気が付けたりすることもあって収穫が大きいです。
今回の研修で面白かったのは初日の終盤に当社社長の自己開示によるストーリーテリングがあり、それを倣って私たちは配布されたフレームワークに各自が必要事項(自身が大切にしている価値観やミッション・ステートメント等)を書き込み、皆の前で発表するというもので、2日目の大半はこれに費やされました。深い内省と、他の管理者の口から発せられる新たな情報に触発され、また改めてビジョン達成に向けての使命感がわいてきました。
当社社長の木村のコラムでも書かれておりますが、今期経営テーマである「百花繚乱」実現のために必要なこと、そのために留意すべきポイントが何であるのか、といったことを気付かせてくれるかのような研修内容でした。
私たちCS本部が掲げた今期ゴールビジョンの中に「付加価値の創出」というキーワードが含まれています。百年に一度と言われる大不況の中で消費を生むためには、競争優位な商品・サービスを作らなくてはなりませんが、その商品やサービスを提供するのは「人」であり「組織」です。クライアントに提供される成果物の品質が、各個人の技能と気遣いや組織のチームワークで決定されるというのなら、今すぐに取り組まなくてはならなかった課題は明確でした。
前期より引き続いて取り組んできた諸々の施策――、部員教育のための「CS部成長のあゆみ」や「自己育成シート」、クライアント提案用に質の高いヒアリングを行い、納品後の管理を行うための「Web戦略カルテ」といったフレームワーク類、それから「制作ガイドライン」(ex.ライティング課の各種ガイドライン)や「D-sta(フリーセル・ディレクション・スタンダード)」(全社的な知識の底上げやサービス均質化のために編集した当社Webディレクションに関する標準知識体系)、「SEOポリシー」といったガイドラインやポリシーの整備、社内教育機関の設立を夢見て立ち上げた企業内大学「フリーセル大学」、全社員の個を尊重し全社共有するためのWeb社内報の開設といった体制の確立など、できる限りのことはしてきました。
しかし、これだけでは足りません。ツールや仕組みがいくら整っていても、それを使いこなすのは結局のところ「人」と「組織」であるので、より深く浸透・深耕させていかなくてはなりません。そもそも上記のような施策は、私一人で企画したものでも確立させたものでもありません。今回の合宿研修に参加している部課長たち全員の協力があって実現し、運用されているものです。今後、これらの浸透・深耕には、次世代のリーダーの出現がどうしても必要になります。その境地に至るまでの経緯を振り返ってみた際、志を一つに、皆で同じビジョンを明確にイメージしながら各組織を牽引し、自立・自律して一歩一歩諦めずに築き上げてきて今があるように思います。しかし、それには時間という大きな代償を必要としました。今後の浸透・深耕に対してはスピード感を持って臨みたいので、次に組織のリーダーとなる人たちに手伝ってもらえないものかと考えました。
皆が今よりも主体性を持って考え、実行することで、会社としての経験がある分、今までよりもスピーディーに進めることができる筈です。この「主体性」ですが、経済産業省が2006年度に行ったアンケートがあり、『企業の「求める人材像」調査| 社会人基礎力との関係』という統計が公開されていますが、大手・中小企業問わず社員に求めているコンピテンシーであることが分かります。
幸い今回の合宿研修では、それを実現するための近道が示唆されたように感じていたので、第二四半期はその点に留意しながら進めていきたいと考えています。重要となってくるのが「権限委譲(エンパワーメント)」であると思いますが、その際特に注意したい点の一つとしては、「自身のミッション・ステートメントを明確にし、自己開示する」ことです(cf.「ジョハリの窓(「Wikipedia」)」)。そうすることで、部下からの信頼を得ることにも繋がると思いますが、この「信頼」や、信頼からくる「内省(腹に落ちて理解する、自身の課題を設定できる)」こそが自発的なスピードと実行力を生み出す起爆剤になる筈と考えています。
主体的な人間として、人生の中で自分はどうありたいのか、何をしたいのかを表現することができる。これを文書にすることは、個人的なミッション・ステートメント、個人的な憲法を書くことである。
(中略)書き上げる過程が、最終的な文書と同じくらい重要だと思う。それは、ミッション・ステートメントを書く、あるいは見直すプロセスに、人を変える力があるからだ。自分の優先順位について深く考え、自分の行動と信念を統一する力があるからである。そして、そうすることによって、あなたは熱意あふれる使命感を持つようになり、周りの環境や出来事に支配されない主体性を持つことになるのだ。
/『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)
CS本部も以前にミッション・ステートメントを掲げたことがありました(cf.「CS部とミッション・ステートメントのご紹介」)が、もう数年前になるし、今では組織やサービスも随分と高度化してしまったので、そろそろ見直しが必要かもしれませんね。
それから、権限委譲の際に注意したい点としての二つ目として、部下との接し方です。部下に対してもともと抱いているイメージがネガティブなものしかないようであれば権限委譲は遅れるだけですし、まずはそれをポジティブなものに変えてゆくマネジメントと、自身の変革とが急を要されてきます。
『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(若松義人著)という本の中で著者が回想されていますが――、
トヨタ生産方式の生みの親・大野耐一氏から仕事の指示を受けたある課長が、即座に「できません」と言ったところ、大野氏から烈火のごとく怒られたというのです。理由は、指示に対して「ノー」を言ったことではもちろんありません。その課長が自分の部下の知恵を信じなかったことにあります。(中略)
豊田英二氏がこう言っている。
「管理職のみなさんは、自分を凌駕する部下を育成していただきたい。人財こそ企業の要であり、企業の盛衰を決めるのは『人財』である。みなさん自身が厳しく己を磨き、部下から心服される管理職となり、部下が人間として大きく育つように努めてほしい」
上司は誠心誠意、育成に努める。育った若手は「自分が育てられた恩」を「自分を凌駕する部下を育てる」ことで返す。これがトヨタ流の人財育成術である。
/『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(若松義人著)
――部下を信じることが重要です。未来の強力なパートナーとして育つことを信じながら育成に励むことが、今、管理者に求められています。
今回の合宿研修参加を通じて、「百花繚乱」実現のためには人財育成が必要であるため、管理者一同で今一歩踏み込んだコミュニケーションを行ってゆくことが必要であると認識しました。まずは合宿研修参加の所感として。
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今の若い人にとって、古典を読むのはなかなか難しいことだと思います。でも、もし自分を磨くために読んでみようと思うのなら、ぜひ手にとってもらいたいものです。(中略)やがて、自分の中に確固とした考え方が育まれていることに気づくと思います。
そのようにして古典によって育まれた考え方は、困難にぶつかり、人間いかに生きるべきか、いかに働くべきかと考えるときに、必ず大きな力となってくれるはずです。
/『何のために働くのか』(北尾吉孝著)
第一四半期を終え、7月4日は今期初の社員総会が渋谷で開かれました。東京・大阪・名古屋・福岡のメンバー、総勢約200名が一堂に介し、各部課のリーダーたちが全社員を前にゴールビジョンの発表をしたり、昇格者・各賞の表彰者を発表する機会でもあります。社員総会の開催理由等の詳細につきましては、当社代表の木村のコラムにてご覧下さい。
私がいつも楽しみにしているのは、決算内容や人事の発表、ベストマネジメント賞や四半期MVPなどももちろん楽しみではあるのですが、当社の掲げる行動指針に照らした「行動指針賞」という7つの各賞に、私の見るCS本部から誰が選ばれるのか?ということです。この賞ですと選考対象として管理者層以下からも選ばれやすいため、自部署からは誰が次期リーダー候補として何名頭角を現してきているのかということが大変気になってしまうのです。その結果こそが、私を含む管理者層のこの四半期の成果でもあるわけですから。お陰様で、この賞ではCS本部からは3名の受賞者を輩出することができました。
実はこの社員総会を迎える少し前の7月1日、私事ではありますが、当社に入社して丸7年が経過し、34歳となりました。一回り近く若い世代の今期新卒などとも社員総会後のパーティーでお酒を交わすに、私も初心にかえったつもりで今期も頑張っていきたいと思いました。
さて、表題にもある「古典」ですが、昨今の先行き不透明な国政の中で、一筋の光明を見出すかのようにこの古典が復権の兆しを見せているというニュースをしばしば目にすることがありました。きっかけとなったのは、『蟹工船』なのか『カラマーゾフの兄弟』なのか諸説あるようですが、私も社会人になる前までは古典が好きでよく読んでおりました。これだけインターネットが普及する世の中にあっても、ビジネスの戦略上では今でも「孫子の兵法」などが引用されることも多く、かくいう私もこの孫子をはじめとした諸子百家が活躍した春秋戦国時代に始まり、秦の始皇帝、項羽と劉邦の時代を経て、三国志の時代に至るまでの中国古典の話に触れたコラムも書いたこともありました。最近でも、『プレジデント 2009.6.15号 迷いが晴れる歴史・古典入門』、『週刊 東洋経済 古典が今、おもしろい!【論語からケインズまで171冊】』と、古典を特集したビジネス誌が多く刊行されています。
今回のコラムでは、開国150年(cf.「インターネットがもたらす第三の開国の夜明け前 ~2009年、横浜開港150周年~」)に因んで、幕末維新にスポットを当ててみたいと思います。新選組局長であった近藤勇の下で坂本竜馬をはじめとした尊攘派(討幕派)志士を取り締まり、副長助勤の沖田総司と共に、幕府側の指揮官として新選組副長を務めた土方歳三が、その短い生涯を終えたのが今からちょうど140年前の1869年、まさに私と同年齢の34歳のときのことでした。
cf.
・『燃えよ剣』(司馬遼太郎著)
・NHK 松山放送局|スペシャルドラマ 坂の上の雲
http://www.nhk.or.jp/matsuyama/sakanoue/
昨年のゴールデンウィークには、今年の開国150周年を待ちきれずに、同僚を誘って土方歳三縁の地でもある函館・五稜郭へ行ってきました。
ナールデンは十七世紀にできた城塞都市で、榎本武揚が函館の五稜郭のモデルとしたことで知られる。ナールデンは六角形で、矢型の塁が特徴的である。強固な要塞都市であって、フランスのルイ一四世の攻撃にもかなり耐えた。函館の五稜郭は蘭学者武田斐三郎がフランスの築城書のオランダ語訳を参考に設計したもので(一八六四年完成)、五角形で大砲攻撃に強い設計となっている。
/『都市計画の世界史』(日端康雄著)
今では、見事なまでの五角形を呈した庭園を持つ観光地となっていますが、土方歳三の生きた歴史的な変革期にあっては堅牢な要塞であったのだろうと彷彿させるつくりをしていました。
ところで、この土方歳三を語る上で重要なキーワードとなってくるのが、「局中法度」と「軍中法度」です。それぞれ、新選組の理念に当たるのが「局中法度」で、行動指針に当たるのが「軍中法度」と言い換えられるかと思います。土方歳三は、新選組という組織を確固としたものにするために組織を組んで互いに牽制が利くように配置し、今のビジネス界でいうコーポレートガバナンスを敷きました。その中で、先の「局中法度」では「士道ニ背キ間敷事」など5か条を、敵中(仕事中)にいるときの指針である「軍中法度」では「敵味方強弱の批判、一切停止の事」他10か条を定めていて、これらの内容は現代に通ずるものもあるなと感じました。
今から150年近くも前の開国の時代にあって、この土方歳三をはじめとした、私と同世代の人たちが志を一つに自身の使命を全うしようとしている姿を古典の中に垣間見て、今回の社員総会で皆の前で発表したゴールビジョンがどうか「絵に描いた餅」にならないようにしたいと強く思いました。
そのために必要な考え方は、冒頭でも引用した、ご両親の影響で幼少時代より古典に傾倒したと言われる北尾吉孝氏の書かれた『何のために働くのか』でも触れられていますが、基本となるのは「知識・見識・胆識」かなと思いました。そこでは、見識を「物事が正しいか間違っているかという判断がつくこと」と言い、きちんと判断するために必要なものが、正しい知識であると言われています。そして、その見識を「実社会で実行する」能力のこと、「自分が正しいと思うことを堂々と行っていく実行力」のことを胆識と呼んでいます。
私たちCS本部の管理者は、こうした考えに倣って社員総会で掲げたゴールビジョンを実務レベルにまで落とし込んだガントチャートに起こし直し、毎月の面談時に使用することにしました。このガントチャートと併せて、以前にご紹介した「CS部成長のあゆみ」と「自己育成シート」(cf.「目標管理と人材育成、組織デザインについて ~「KPT法」による"ふりかえり"の実践と、コンピテンシーシートの活用~」)をうまく運用することこそが、全社的なビジョンをオペレーションを行ってもらっている層まで浸透させ、ミッションリンクを果たすための縦の意思疎通を可能にするコミュニケーションツールになり得るものだと考えています。
私たちは、Webコンサルタントとしてクライアントの抱える経営課題に向き合う中で、何が正しいのか判断することができなくてはならないし、そのための知識も必要です。そして、実際に掲げた課題をクリアするまでのプロセスを描き、やり遂げる実行力が必要とされています。まだまだお客様に勉強させて頂くことも多いですが、是非課題を共有頂き、共に打ち克つための戦略を練っていきましょう。
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