小川 悟(取締役CS本部長)
企業は社会の公器である。したがって、企業は社会とともに発展していくのでなければならない。企業自体として、絶えずその業容を伸展させていくことが大切なのはいうまでもないが、それは、ひとりその企業だけが栄えるというのでなく、その活動によって、社会もまた栄えていくということでなくてはならない。また実際に、自分の会社だけが栄えるということは、一時的にはありえても、そういうものは長続きはしない。やはり、ともどもに栄えるというか、いわゆる共存共栄ということでなくては、真の発展、繁栄はありえない。それが自然の理であり、社会の理法なのである。自然も、人間社会も共存共栄が本来の姿なのである。
/『実践経営哲学』(松下幸之助)
2009年4月27日は、"経営の神様"と呼ばれた松下幸之助の没後20年の日にあたります。
cf.パナソニックミュージアム 松下幸之助歴史館 | Panasonic
http://panasonic.co.jp/rekishikan/
大阪の「パナソニックミュージアム 松下幸之助歴史館」で行われる特別展では、副題に「かつてない難局はかつてない発展の基礎となる」という松下幸之助の言葉を引用しています。
文字通り、現在の日本も歴史的な大不況を迎えています。昨年の上場企業倒産数は、2002年の29件を超え33件と過去最高を記録しましたが、今年に入ってからも不動産・建設業をはじめ、現時点で既に2008年の半数近くの上場企業が倒産しているという話を聞きます。
昨年、「パナソニック株式会社」と社名変更した旧松下電器産業株式会社も、2009年3月期の連結当期損益は3800億円の赤字になる見通しであるというニュースがあり、同じように日立製作所やパイオニアなども公的資金の出資要請を検討するほどの事態となっています。
かつて、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫が「三種の神器」と呼ばれてから半世紀を経て、世界の経済事情や消費者のライフスタイルは大きく変遷し、今、家電業界は窮地に立たされていると言えるかもしれません。
そうしたネガティブなニュースばかりの世の中で、先の「かつてない難局はかつてない発展の基礎となる」(ちなみに、2008年10月に「パナソニック株式会社」へと社名変更を断行した、現代表取締役社長、大坪文雄氏の座右の銘は、「逆境は己を磨く天与の機会」)という言葉からは、私たちも大変勇気を与えられるような気がします。
そうした中、定額給付金の支給が始まりました。皆さんは何に使われますか?
この定額給付金の支給という経済政策そのものは賛否あるようですが、私個人としては決まったことの是非についてあれこれ言っても始まらないので、自己投資かレジャー(旅行)のために使わせて頂こうと考えております。
と、まぁそれは消費者の立場としての用途ですよね。
この「Webコンサルタント.jp」をお読みの方の中には、中小・ベンチャー企業で経営に携わる方も多いと思いますが、企業の見地からこの経済政策についてどう対処するかをお考えでしたでしょうか。
マーケティング用語に「PEST分析」というものがあります。これは、「Politics(政治)」、「Economy(経済)」、「Society(社会)」、「Technology(技術)」の頭文字を取って並べた、マクロ環境分析の考え方の一つです。つまり、それぞれの分野で起こっていることに着目して戦略を練る、もしくはこれから起こることを予測して取る対策などを決定する際の指標にできる分析手法です。
昨年、政府から「定額給付金」についての発表があった際、何か対策を講じられた方はいらっしゃるでしょうか。お恥ずかしながら、私は当時、真っ先に消費者としての立場でこのニュースを見てしまっていました。
しかし、実際に街を歩いてみると、随所で「定額給付金」に便乗したサービスを提供している場面に出くわしました。勝間和代氏の著書、『勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考法の基本と実践』(「知識のレベルで思考を止めない!」)にも書かれた、コンサルティングファームで問題解決・意思決定のための一つの考え方として用いられることがあると言われる「空・雨・傘」のフレームワーク――、空―事実認識(知識・理解)、雨―解釈(応用・分析)、傘―問題解決(統合・評価)――で言えば、私の思考は「事実認識」で止まっていたのです。
つまり、「定額給付金がもらえるという事実」を認識しただけで、「ということは?」という発想まで至れなかったわけです。政府の意向や消費者心理の視点でこの事象を捉え、それを自社の理念や事業ドメインと紐付けて行動に繋げてゆくというのは実際には至難の業ですが、同時に私の内にはまだ、こうした突発的なことが起こった際に、すぐに「そうであれば、こうする!」と判断する際に基準となる理念や、フレームワークのような体系化された思考がないことを自覚しました。
そんな心境のままネットサーフィンをしていた際、以下のようなサイトを見つけました。
■お買い物徹底ナビ
http://event.rakuten.co.jp/tieup/benefit/
cf.「楽天トラベル」「楽天オークション」定額給付金の支給に伴い、「12,000円」企画開始 ~「楽天市場」「楽天GORA」も順次開催~(楽天株式会社 ニュースリリース,2009年3月12日)
http://travel.rakuten.co.jp/news/4205.html
このサイトは、ショッピングサイト運営大手の楽天市場が企画したイベントサイトです。なんと、定額給付金支給額である12,000円や20,000円に合わせ、税込み・送料込みでジャストの価格帯の商品ばかりを集めた店舗を紹介するサイトなのです。こうした取り組みは、他のYahoo!やAmazonでも行われていますが、社会の動向に合わせて早期に企画を練り上げ、実施にまで持ってゆくのは中小・ベンチャー企業では大変ですね。
こうした際に、私たちができることの中で言えるのは、リスティング広告によるプロモーションでしょうか。既存のお客様はサービス・小売業の方も多く、「商戦」という言葉を多く使われます。時宜を踏まえたタイムリーなプロモーションが求められるのがこの事業の特徴です。
■「フリーセルECリスティング」 売れるECサイトにしませんか?
http://www.web-consultants.jp/cs/ec_listing.html
cf.2009年5月19日、【30社限定・無料セミナー】中小・ベンチャー企業向けリスティング広告基礎講座(株式会社フリーセル)
http://www.web-consultants.jp/press/0904google.html
インターネットで商品を販売することで企業や店舗は利益をあげることができますし、消費者はいつもよりお得な買い物ができるというもので、結果日本のGDPを押し上げることにも繋がります。
いずれにしても、共存共栄ということは、相手の立場、相手の利益を十分考えて経営をしていくということである。まず相手の利益を考える、というといささかむずかしいかもしれないが、少なくとも、こちらの利益とともに相手の利益をも同じように考えることである。それが相手のためであると同時に、大きくは自分のためにもなって、結局、双方の利益になるわけである。
/『実践経営哲学』(松下幸之助)
冒頭で松下幸之助の著書について触れましたが、私が所有するのはPHP文庫版のものです。思わず書棚に揃えたくなるような各色違い、上質紙のカバーが消費者心理をくすぐり、私も例に漏れず数冊まとめ買いしてしまったものでした。
不景気になっても、志さえしっかりともっていれば、それは人を育て、さらには経営の体質を強化する絶好のチャンスになると思うのです。
/『経営心得帖』(松下幸之助)
不景気にはまた不景気に対処する道がおのずからあると思うのです。(中略)たとえば、昨年は忙しくてほうっておいたアフターサービスを、この際徹底的にやろうとか、お店の整備を積極的にはかろうとか、いわゆる甘い経営を排していろいろな方策を考える。それも、他力に依存することなく、自分がこれまでにたくわえた力によって一つひとつ着実に実施していく。
/『商売心得帖』(松下幸之助)
以上のように、いくら不景気であっても、自社のことはもちろん消費者のことでも、考えに考え抜いて改善に向かわせることはいくらでもできる筈です。
また、松下幸之助が唱えた企業の三つの成功条件というものがあります。それは「絶対条件」、「必要条件」、「付帯条件」と呼ばれるもので、それぞれ「経営理念の確立」、「社風」、「戦略と戦術」としており、成功要因を占める割合を、経営理念の確立が50%、社風が30%、戦略と戦術が20%としています(『理念経営のすすめ 成功する会社の経営理念と戦略』/田舞徳太郎著)。
私たちフリーセルの企業理念や中期経営ビジョンにも、この「共存共栄」が謳われています。
■企業理念 | 会社案内 | 株式会社フリーセル
http://www.freesale.co.jp/company/vision/
松下幸之助没後20年、改めて「共存共栄」という企業理念に立ち返り、私たちのお客様とともに企業を発展させていきたいと思いました。
この記事に関連するテーマ
第9期新体制、CS本部は「マーケティング力」と「クリエイティブ力」の強化を推進 ~内定取り消し時代の新卒入社者を迎えて~
2009年04月 5日 04:10 PM
投稿者 小川 悟
組織図には事業のすべてが表れる。人に対する考え方や戦略やコミュニケーションがすべて表れる。事業を変えるためには組織図を変えることだ。事業の意思や戦略を組織図に明らかにすることだ。
/『リクルート式「楽しい事業」のつくり方 Hot Pepper ミラクル・ストーリー』(平尾 勇司著)
2009年4月1日、当社は第9期に突入しました。詳細は新社長に就任した以下、木村のコラムをご参照頂きたいのですが、今期より3本部体制となり、私はそのうちの一つであるCS本部を任せて頂くことになりました。
■フリーセル第9期を迎えご挨拶(木村 裕紀)
http://www.web-consultants.jp/column/kimura/2009/04/9.html
経営テーマは「百花繚乱」。一人ひとりが職場の中でスポットライトを浴びて活躍する期にという願いが込められています。CS本部は、大きく「Webマーケティング部」と「制作部」とに分かれます。前者にディレクターや顧客サポート部門、専任のSEO担当者など、後者にはWebデザイナーやプログラマー、映像制作者、ライターなどを集積させ、情報共有の精度向上やサービスの標準化と差別化、ムリ・ムダ・ムラの排除、ヒューマンエラーの未然防止、WebマーケティングやWeb制作に関わる基本スキルの強化を図ります。その根拠となるものとして、前期末までに体系化を進めた各生産ラインごとにまとめた「ガイドライン」や「メソッド」などがあります。市販の書籍にもこの手の内容が多く出ていますが、殊当社のお客様に対するサービス提供や業務フローに見合った内容となると、書籍の内容がピタリと当てはまるケースはなかなかありませんので、当社独自で用意する必要がありました。
他にはやはり、当社の強みを活かした実績の活用が挙げられると思います。単にWeb制作だけを受託で行うマーケットイン型の企業でもなく、ベンダーの開発した商材をOEMなどで販売する営業系の代理店でもなく、一部の商材を除きほとんどの提供商材が全て自社のみで営業、企画・開発、アフターフォローまで一貫して完結できています。同業界で前例が少ないため苦労することも多いですが、前人未到の地だけあって先行者メリットや機密性を得られることも多く、それが市場に対する競争優位になっていると実感しています。
さらに、当社の体制として事業本部に全国で営業スタッフやコンサルタントが75名ほど、マーケティングスタッフが15名、CS本部に80名強おり、全国の多くの中小・ベンチャー企業様に等しくサービス提供を行う体制が整っていますが、全てのお客様に均一なサービスを約束し、提供プランごとに差別化されたベネフィットを顧客提供するためには、力技以外にも論理的思考が求められてきます。
■SEO対策(「Webコンサルタント.jp」より)
http://www.web-consultants.jp/service/seo/
例えば、上記ページをご覧頂けますでしょうか。当社提供のサービスの一つをご利用頂いているお客様のSEO対策状況の統計となっています。サンプル数として2000件を対象にしています。 現時点では2500件程になっていますが、こういったものも1ヶ月に10数件の受注件数しかない企業では算出が難しいため、リサーチ会社に依頼したものか、各社シンクタンクが出している市販の統計資料に頼らざるを得ないと思います。私たちの場合は、仮に後者のような統計資料が手元にあっても丸々全部を信用するわけにはいきません。現在のフェーズにおいて顧客戦略を考える上で私が重要視しているのは、「私たちのお客様の状態が現状どうなっているのか」ということで、一般論は今後の戦略立案のために上司に提出する企画書を飾るレトリック、あるいは、説得材料の根拠程度の用途しか期待しておりません。
■(下図)当社顧客データベースより、SEOサービスを提供中のお客様のWebサイトをエクセルファイルに抽出し、提案キーワードの上位表示順にソートした社内データ
こうした資料を「欲しいときに欲しい条件」で即抽出可能なように、情報を整理しつつ管理してゆくことで、営業戦略上はもちろんのこと、私たち開発・サービス提供部門においても、傾向と対策を把握しやすいため、改善にも活かすことができると考えています。
今、伸びているのは「情報産業」ではなく、「情報整理産業」
/『情報大爆発 コミュニケーション・デザインはどう変わるか』(秋山 隆平著)
こうしたデータマイニング的な情報処理の必要性にも迫られたため、今期よりSEO専任スタッフの職域を拡大し、Web解析全般に携わる職務を遂行してもらおうと考えています。今後にご期待下さい。
さて、話はうって変わりますが、先般は入社前日に内定取り消し措置を行った企業がニュースで話題となりました。私の就職活動期は山一證券破綻による内定取り消しがあった時代でしたが、今年は半強要的に内定辞退や自宅待機を迫られたケースも含めると、その当時を上回る数の新卒の方が内定取り消しの事態に遭っていると聞きます。
そうした時代に、当社にも新卒が全国で十数名入社してくれました。新卒採用は今年で4期目です。3年前の2006年4月入社の面々も、続く07、08新卒入社者も、今では現場の最前線でバリバリ活躍していますので、新卒向け研修を終えて現場配属となる日が今から待ち遠しい気持ちで私はいます。
新卒入社者の多くが、「早く仕事を覚えて職場で活躍したい!」と逸る気持ちを抑えながら初めての実務に直面し、理想と現実とのギャップを感じたり、思っていた以上に難しいことを痛感するビジネスコミュニケーションの壁と対峙することになるでしょう。それを一つひとつクリアしてゆく中で、お客様とのコミュニケーションに楽しさを覚えたり、自分の成長を感じたり、仕事のやりがいを感じてブレイクスルーしてゆく姿を想像しながら、受け入れ側の私たちも毎年、組織としての成長を強いられることになります。
私たちにとってはもはや常識となっている社内の業務フローも、新たに加わるメンバーから見れば複雑怪奇な内容かもしれない、今では慣れてしまって気にも留めないことが実は不安の対象だったりすることもあるかもしれない、自己成長のために何気なく心掛けている行動習慣が気付きにくいかもしれない、そういった目には見えない新卒入社者のニーズを想像しながら、私たちは彼らが最も効率的に成長できる階段を準備しなくてはなりません。
当然ですが、新卒入社者を受け入れることが嫌で内定取り消しにする企業はありません。昨今の経済危機に起因する、かつて経験をしたこともないくらいの不測の事態に、どの企業も苦渋の決断だったことと思います。そうした時代の中で全社員数の10%弱の人数の新卒入社者を採用できる当社環境をありがたく感じなくてはいけないなと思っています。
新卒入社者育成のミッションは私たちにとっても自己成長のための課題です。また、自分たちのためだけでなく、今後彼らが成長し、サービスを提供する立場になった際に、お客様に喜んで頂けるように実務能力を高めていかなくてはなりません。企業の評判管理も、Webサイトの上位表示も、常に現状に満足することなく課題を見つけ、お客様が当社に投資頂く貴重な運転資金・広告予算は、コストセンター部門であるCS本部として、1円たりとも無駄遣いすることのないように「生産」か「還元」かに繋がるように活用していきたいと考えています。
私は人間というのはそれぞれみな、まだ発掘されていない財宝のような存在だと固く信じている。人それぞれに限りない可能性を秘めている。
/『ムハマド・ユヌス自伝 貧困なき世界をめざす銀行家』(ムハマド・ユヌス&アラン・ジョリ著,猪熊 弘子訳)
本コラムの締めくくりとして、先月3月25日に来日講演された、ムハマド・ユヌス氏の自伝から引用をして終わりたいと思います。今期も1年、どうぞ宜しくお願い致します。





















