美容医療ホームページにメス!?|クリニックの広告・広報戦略の展望を探る

投稿者:コンテンツ編集課

2012/02/06 08:35

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年始早々社内外から大きな反響があった、厚生労働省による「美容医療分野のホームページに対する規制強化」について取り上げます。まずは報道された内容をみていきましょう。

厚生労働省は15日までに、美容整形や脱毛、脂肪吸引などを行う医療機関を対象に、ホームページ(HP)での宣伝を規制する指針を、2012年度中に策定することを決めた。限られた成功例を強調する施術前後の写真や患者の体験談は、掲載を禁じる方針だ。

医療機関の広告は医療法で厳しく制限され、雑誌広告などは現状でもこうした表現が禁止されているが、ホームページは対象外。美容クリニックなどのホームページを見て訪れた患者が高額な費用を請求されたり、施術結果が不本意だったりといったトラブルが増え、厚労省はルールが必要と判断した。 (共同通信)

この報道で分かるのは、「医療法上でホームページ=広告とみなすのは時期尚早」「でも別途ガイドラインを見直して規制を強化しますよ」ということです。


規制されるのは、主に美容医療(美容整形・脂肪吸引・脱毛など)といわれる分野のホームページで、広告やホームページの果たす役割が特に大きく、それらが収益の源泉となっています。そうした意味ではインパクトのある報道だったと言えそうです。


ではなぜ今回、「美容医療の分野のホームページ」にスポットが当たったのでしょうか? 順を追って理解を深めていきましょう。広告主はもちろん、広告代理店、ホームページ制作会社の担当者、類似業界の方も今後の展望や背景を押えておきたいところです。


◆医療法上の広告とは?
今回は「ホームページ=広告」とは定義されない方針ですが、昨今の医療美容分野のホームページが広告的過ぎるゆえ、悪い意味での影響力を懸念しての規制強化と言えます。では、そもそも「医療法上の広告」とは何なのでしょうか? その点について理解しておかないと話は次に進みません。

 

【医療法上の広告の定義 《3要件》】

  1. (1)誘因性 (患者等の受診を誘因すること)
  2. (2)認知性 (一般人が閲覧可能なこと)
  3. (3)特定性 (医療機関が特定できること)

  4. 上記の3要件を満たすものを医療広告規制における「広告」と言います。具体的には、看板・新聞広告・雑誌広告・放送(テレビ・ラジオ)・フリーペーパー・広告塔・郵送DM・院外向けのパンフレット・演述・電車の中吊り広告・インターネットのバナー広告(ディスプレイ広告)などを指します。


その一方で、院内配置のパンフレットや医院のホームページは、患者さんが自らの意思で情報を求めてアクセスしないと得られない情報であるという性格上、広告ではなくあくまで「広報」という位置づけ。


今回の規制強化にあたって行われた昨年11月の検討会でも、「ホームページはもはや広告とみなすべきではないのか?」という議論になったものの、引き続き自主規制コードを設けた「広報」としての役割を担うことで決着したのです。

 

「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針」(医療法改正:平成19年4月1日)

インターネット上の病院等のホームページは、当該病院等の情報を得ようとの目的を有する者が、URLを入力したり、検索サイトで検索した上で、閲覧するものであり、従来情報提供や広報として扱ってきており、引き続き、原則として広告とは見なさないこととする。


◆「美容医療」にとって広告は“生命線”

美容医療にとっての広告とは、昔から収益確保のための命綱であり、また医療広告規制を受けずに情報提供できるホームページは「魔法の広報ツール」でもありました。というのも、従来クリニックを選択する際にもっとも信頼があり効果的とされる「口コミ情報」が他の医療分野に比べて圧倒的に得られない分野だったからです。


「美容整形」「脂肪吸引」「脱毛」といった美容医療の施術(受診)は、基本的に患者さんのコンプレックスに基づいており、受診者が友人知人に公表したがらないため、他の医療、たとえば歯科医療などに比べ決定的に口コミが少なくなります。
※この盲点を突いたのがインターネットのクリニック専用口コミサイトですね

このように美容医では充分に口コミに頼れない分、広告に多額の投資をすることで患者さんを集めてきたある種リスキーな歴史があり、同様に規制対象外であるホームページにも特に注力してきた分野であると言えるでしょう。

 

◆患者保護と医療広告のバランスに苦慮

これまで厚生労働省や日本美容医療協会(内閣府認定公益社団法人)は、患者保護と医療や美容医療における情報発信のバランスに苦慮し、罰則を伴わない、いわゆる「自主規制コード」によってなんとか体裁を保ってきました。


平成19年4月の「医療広告に関わる医療法の大幅改正」は最たるもので、「医療広告の定義の明確化」「表示可能な文言範囲の拡大」「違反広告に対する罰則の明確化」などにより、医療美容を含む医療広告に対して、ある程度の訴求表現を認めたうえで、自主的に「適正な情報提供」に努めるように働きかけてきました。どちらかと言えば規制緩和の方針です。


しかしながら、3年足らずの間、自主規制に向かうどころか美容医療の違反広告は後を絶たず、患者被害も軒並み増加傾向になります。さらにはインターネットの利用者拡大、インターネット経由での被害者増大の傾向が顕著になり、今回、広告対象外のホームページにまで規制が至ることになったわけです。

 

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消費者委員会(内閣府)による、エステ・美容医療サービスに関する消費者問題についての実態調査

 

◆エステティックサロンとの差別化はどうなる?

そうなると広告主側としては、医療法ではなく医師法的な観点で美容医療クリニックと医師免許を持たないエステティックサロンとの差別化が図りづらくなることが懸念されそうです。美容医療機関のホームページにおける「術前術後の写真」「患者の声」といえば、医療行為ならではの効果効能を示せる「コアなコンテンツ」でした。


エステティックサロンなどと明確に差別化でき、医療ならではの高い効果を証明できるこれらの掲載が禁止されるとなると、それ以外の部分、例えば、医師の経歴や医療技術に対する考え方、導入している医療機器のほか、明瞭な料金表示、医療におけるアフターケア、スタッフの取得資格といったコンテンツによって医療ならではの高い効果を証明していくほかないでしょう。


また美容医療機関以外のホームページの取り締まり(医師法等)も強化されるのと同時に、消費者としても、医療機関なのかどうかを確実に見極める鑑識眼を持つことがより重要になると考えます。


いずれにしても、今回の報道によって消費者の鑑識眼は確実に高まるはずなので、クリニックはもとより美容に関わる事業主は、現在のホームページを再度見直して、適正な情報提供の推進に早めに舵を切れるかどうかが経営を左右することになるでしょう。


◆他の関連法規にも注意を!

今回の方針決定は、ある意味で厚生労働省の引責宣言でもあります。今後、美容医療機関のホームページの実情をより正確に把握するためパトロールしていくというコミットメントにほかなりません。自主規制を促すとはそういうことであり、「美容医療機関のホームページ」と責任反映を明言したことは、「徹底的に監視していきます!」という宣言と捉えてよいと思います。


それに伴って、関連法規の遵守にもいっそうの注意が必要になります。ホームページの監視が強まれば、医療法以外での観点での違反にも目が向きやすくなるため、厚生労働省が主管の薬事法、昨年美容医療ホームページ経由での被害をリサーチした消費者委員会(内閣府)と密接な関係のある消費者庁の景品表示法(優良誤認・有利誤認)、不正競争防止法などの取り締まりも、同時に強化されることになるでしょう。


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消費者委員会(内閣府)による、エステ・美容医療サービスに関する消費者問題についての実態調査

◆広告代理店や制作会社も規制対象

現行の医療広告ガイドラインでも同じことが言えますが、規制の対象は何も医師や医療機関に限った話ではありません。広告代理店や出版社、マスコミ、個人事業主、さらに今回はインターネット関連の広告代理店やWeb制作会社、広告戦略、広報戦略に関わる事業者も対象に含まれてくるでしょう。実際のところ、昨今の違法広告の多くは広告関連に関わる事業者の助言による影響も指摘されています。


広告主は広告制作やホームページ制作を委託する業者をしっかりと見極めるべく正しい知識と見識が求められるのと同時に、広告代理店や美容医療のホームページを制作する業者は、クライアントの重要な収益源の確保と医療コンプライアンスの両立をより精度高く実現しなければならなくなるでしょう。

私も、医療広告や美容関連のコンテンツ制作、広告・広報戦略に携わっている身として、さらに理解を深めていくとともに、クラインとのみならず、医療美容業界の健全な発展のためにも尽力できればと考えています。

 

ご質問、ご要望、ご相談などがあれば、当サイトのお問い合わせフォームから直接お寄せいただければと思います。なお次回は、気になる具体的な表現について掘り下げてみる予定です。

 


【編集担当:松岡】

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