『ギター・マガジン』はなぜ理想的なコト売りを実現できるのか!?|キーワードはノスタルジーと顧客志向

投稿者:コンテンツ編集課

2011/05/03 19:22

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リットーミュージックのギター音楽専門誌『ギター・マガジン』は今年で創刊30周年。それを記念したライブ・チャリティーイベント「ギター・マガジン・フェスティバル」が開催されるということで観に行ってきました。追加席を含むプレミアムシート(10,000円)500席はあっという間に完売し、一般席(8,500円)も満席という盛況ぶり。また雑誌の発行部位数も好調で専門誌では異例の25万部(公称)を維持しているそうです。

 

当日の状況はギター・マガジン・ブログにアップされているようなのでご興味のある方はどうぞ。Cf:http://www.rittor-music.co.jp/blog/gm/ (ギター・マガジン・ブログ)

 

それにつけても、音楽業界・出版業界ともに急下降の一途の現在、どうして?という疑問が浮かんできます。ニッチでマニアックな世界が故、専門誌を通じて特定のユーザー層を確保しているのは理解できるのですが、それだけでは市場やトレンドの変化が激しい今の時代、なかなか勝ち抜けないでしょう。そこには、モノが売れない時代ならではの確固たるマーケティング戦略があったのです。それは……。





(1)商品よりもノスタルジーやポジティブになれる夢を売る

モノが売れない時代にモノを売るのはご法度とばかりに、夢のあったポジティブな時代、楽しみの多かった時代への回帰志向を意識したベネフィットのあるコンテンツ。Char、高中正義、渡辺香津美、小沼ようすけ、松原正樹、野呂一生といった出演者を見ればわかる通り、ターゲットは30代・40代がメインで、不安定な未来よりも安定した過去へのノスタルジーを売るコンテンツ戦略です。


イベントだけでなく雑誌のコンテンツも必ずそうしたユーザーを意識した特集が組まれています。モノ売り、コト売りという言葉がありますが、まさに後者の典型だと言えそうです。ノスタルジーに投資したいユーザー像が明確に浮かんできます。

 

(2)新規ユーザーとリピーターの両方を意識する

市場の変化という観点で面白いのは、ノスタルジー世代(30代後半以上)だけでなく、新規ユーザー(10~20代)を取り込んでいることです。今回のイベントでも若い世代が多くて驚いたのですが、新規ユーザー(10~20代)には新鮮に映り、リピーター(30代以上)にはノスタルジックに思えるコンテンツが意識されています。

 

食品関係の復刻ブームや野球の復刻版ユニフォームなどに代表されるようなジェネレーションサイクルを意識した戦略。成熟市場において商品開発が難しい時代、ニューヒーロー不在時代ならではのマーケティングが感じられます。

 

(3)顧客志向でコンテンツを売る

音楽業界にしても出版業界にしても旧態依然とした販売構造から脱却できず、既得権益にこだわるあまり顧客志向から離れている印象があります。だからこそクオリティの高いコンテンツで差別化を図れます。良い意味で流行に左右されない一貫性のあるコンテンツ作りにより保守的なユーザーの志向に合致させています。

 

リットーミュージックのWebサイトを見ると、ギターアプリの開発、ブログコンテンツ、メルマガ配信、自社媒体連動、クロスメディア連動など、Webの活用にも積極的で、既得権益だけでなくユーザーを意識したメディア適合にも成功していますね。


(4)パーソナルな趣味(投資)とリンクしている

所得が減って消費が冷え込むと消費者はよりいっそう保守的になります。簡単にいうと財布の紐が固くなり、より現実的な投資をします。貯蓄、健康への投資、生活への投資、文化への投資……。そんなパーソナルな購買行動とリンクしていると言えそうです。


(5)分かりやすい商品価値と専門性がある

とかく現代は情報過多です。新聞・テレビ・雑誌に加え、各種WebサイトやTwitter・フェイスブックといったソーシャルメディアを通じて膨大な情報を短時間で受け取ります。つまり、かつてに比べ逆に何が自分に必要なのかを判断しづらい時代です。ですので、価値が分かりやすいことがヒットの条件になります。

 

リバイバル商品やブランド力のある商品がヒットし、クチコミが重視されているのは、歴史や実績、ブランド、慣れ親しんだもの、といった明確な判断基準があるから。分かりやすいマスターピース(共感要素)が消費行動の拠りどころとなるわけです。




ブランドロイヤリティが高く、他の競合誌と差別化が図られているという部分もありそうですが、ターゲットにとってのノスタルジー、ジェネレーションサイクル、顧客志向のコンテンツ、パーソナル志向、商品価値の分かりやすさなどは、販売戦略や商品開発において必ず確認しておきたい要素です。

(1)ユーザー層のノスタルジーとの接点を探そう
(2)商品ではなく物語・コンセプト・夢を訴求できる機会を作ろう
(3)世代によって異なる視点やニーズを分析しよう
(4)顧客志向でコンテンツの質を追求しよう
(5)常に変化する世代間のギャップを意識しよう
(6)商品の持つ分かりやすさを常に意識しよう

モノが売れないから夢を語るエネルギーも得られない……ではなく、夢があれば行動が起き、夢がなければ何も起こらない!といったポジティブな志向でいることが大切なのではないでしょうか。ネガティブで先行き不透明な時代だからこそ、消費者はそれを不安を解消してくれる商品やサービスを求めているのです。

 

【編集担当:松岡】

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